立憲民主党の元国土交通相・羽田雄一郎が新型コロナウイルス感染で急逝したことに伴う参院長野選挙区補欠選挙。実弟を担いだ立憲は「弔い合戦」を前面に掲げるが、野党共闘にはほころびも目立つ。自民党はこの機に乗じて「羽田王国」を攻略しようと懸命だ。(敬称略)
 ◇残る不協和音
 「今の緊張感をなくした自民党政権が続く限りわれわれの命はいつまでも危険にさらされる」。立憲新人の羽田次郎は9日、兄を新型コロナで失った実体験に触れながら、政府の感染対策を批判。PCR検査の拡充や医療提供体制の整備を訴えた。
 長野では、二人の父で元首相・孜が築き上げた強固な支持基盤がいまだ健在。陣営側は、雄一郎の写真とともに「私たちは忘れない」と書き込んだビラを配布するなど、「羽田家」の選挙をアピールすることに余念がない。
 孜と親交の深かった立憲の重鎮、小沢一郎も12日に来県。羽田家の墓前で必勝を誓い、弔いムードの演出に一役買った。県連幹部は「次郎は雄一郎よりも孜さんに似ている。長野で羽田ブランドは絶大だ」と自信を示す。
 立憲は共産、国民民主、社民各党の推薦も取り付けたが、足並みは乱れている。
 きっかけは、羽田が2月に共産の県組織などと結んだ政策協定だ。「日米同盟に頼る外交姿勢」の是正が盛り込まれたことに、連合や国民が反発。国民が推薦を一時撤回する事態に発展した。
 危機感を覚えた立憲の幹事長・福山哲郎は告示日の8日、県内での応援演説を終えると、その足で連合長野の会長・根橋美津人と面会し、一連の騒動を陳謝。改めて連携を確認したが、野党内の不協和音は残ったままだ。
 10日、野党幹部がそろい踏みした長野県松本市の街頭演説。立憲の代表・枝野幸男は自身の出番が終わると、共産の政策委員長・田村智子、社民の党首・福島瑞穂の演説を待たずに会場を立ち去った。
 立憲側は「連合に配慮したということだろう」(関係者)と解説。一方、共産幹部からは「支持者には不満な人もいると思う」との声が漏れる。
 ◇亀裂に照準
 自民新人の小松裕は、医師としての経験を生かし、新型コロナ対策での「即戦力」ぶりを強調。17日の街頭演説では「収束の鍵はワクチンをいかに早く多くの方に打てるかだ。医療と政治をつなぐ大事な役割を託してほしい」と訴えた。
 陣営側は「羽田王国」の強さについて、自民出身の孜の存在が保守層も引き付けたためと分析。安全保障政策をめぐる野党側の亀裂に照準を合わせ、揺さぶりを掛ける。
 3月の公開討論会。羽田が日米関係の強化に言及すると、小松はすかさず、「日米同盟に頼らないという協定にサインしておいて、どちらなのか」と追及。告示後の10日に現地入りした元防衛相・中谷元も「野党は自らの政策や発言に責任を持っていない」と批判を展開した。
 もっとも、小松は2017年衆院選で比例復活もかなわず落選。くら替えによる再起を期した19年参院選も、雄一郎に約15万票差で大敗するなど、厳しい戦いが続いている。「今回も負ければ次のチャンスはない」。党幹部はこう指摘した。 (C)時事通信社