基礎疾患として2型糖尿病がある新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の死亡リスクと血糖降下薬との関連性が示唆されているが、詳細は明らかでない。英・University of LeicesterのKamlesh Khunti氏らは、2型糖尿病患者285万1,465人を対象に観察コホート研究を実施し、血糖降下薬とCOVID-19関連死リスクについて調査した。その結果、メトホルミンでは23%のリスク低下、インスリンでは42%のリスク上昇が認められたとLancet Diabetes Endocrinol2021; 9: 293-303)に報告した。

SGLT2阻害薬はACE2の発現を増加、死亡リスクを高める可能性

 糖尿病はCOVID-19死亡に関連する重要な危険因子の1つと指摘されている。最近のコホート研究では、糖尿病を合併するCOVID-19患者の死亡リスクは非合併患者の2倍になるといった報告がある。

 一方で、糖尿病の治療に用いられる血糖降下薬との関連性を指摘する声もある。例えばSGLT2阻害薬は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が細胞に侵入する際に利用するアンジオテンシン変換酵素(ACE)2の腎臓での発現を増加させてCOVID-19関連死のリスクを高める可能性がある。同様に、GLP-1受容体作動薬も肺や心臓組織におけるACE2の発現増加と関連し、COVID-19患者に有害な影響を及ぼす可能性がある。

 そこで、Khunti氏らは基礎疾患として2型糖尿病があるCOVID-19患者に処方された血糖降下薬がCOVID-19関連死リスクに関連するかを検証する全国コホート研究を実施した。National Diabetes Auditの2018年1月~19年3月のデータから糖尿病患者285万1,465人(年齢中央値67歳、男性55.9%、白人66.1%、アジア人14.0%、黒人4.8%)を抽出。

 Cox回帰分析により、人口統計学的、社会経済学的、臨床的要因による交絡に対する傾向スコアを使用して共変量を調整、各種の血糖降下薬を処方された対象のCOVID-19関連死のハザード比(HR)を推計した。

SGLT2阻害薬は18%のリスク低下

 最も多く処方されていた血糖降下薬はメトホルミン(63.1%)で、続いてスルホニル尿素(SU)薬(19.7%)、DPP-4阻害薬(16.8%)、インスリン(12.3%)、SGLT2阻害薬(9.3%)、GLP-1受容体作動薬(3.9%)、チアゾリジン系薬(2.1%)、グリニド系薬(0.2%)、α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI、0.2%)の順だった。

 151万7,762人・年の追跡期間中に、285万1,465人のうち1万3,479人(0.5%)でCOVID-19関連死が発生した(1,000人・年当たり8.9人)。調整後HRは、インスリンで1.42(95%CI 1.35~1.49)と最もリスクが高く、メトホルミンで0.77(同0.73~0.81)と最小だった。

 その他の薬剤は、グリニド系薬が0.75(95%CI 0.48~1.17)、SGLT2阻害薬は0.82(同0.74~0.91)、チアゾリジン系薬は0.94(同0.82~1.07)、SU薬は0.94(同0.89~0.99)、GLP-1受容体作動薬は0.94(同0.83~1.07)、DPP-4阻害薬は1.07(同1.01~1.13)、α-GIは1.26(同0.76~2.09)であった。

処方中止や変更の必要はなし

 以上の結果について、Khunti氏らは「血糖降下薬使用中の2型糖尿病患者において、COVID-19関連死のリスクはメトホルミンで低く、インスリンやDPP-4阻害薬で高かった。理由としてメトホルミンが糖尿病の発症初期に処方されるのに対し、インスリンは後期に用いられるため適応による交絡が関連している可能性が高い」と考察。今回の研究では、薬剤クラスごとのリスク差が小さいことに加え、2型糖尿病の進行ステージに応じ異なる薬剤を使用していたことから、「薬剤の直接的な影響というより、他の要因が関係している可能性がある。COVID-19が世界的に流行している現状では、血糖降下薬の処方変更や中止に至る指標とまでは至らない」と結論している。

(今手麻衣)