寒冷凝集素症(CAD)に対する抗補体モノクローナル抗体スチムリマブの有効性および安全性を検討する多施設共同第Ⅲ相非盲検単群試験CARDINALが、ドイツ・University of Duisburg-EssenのAlexander Röth氏らによって日本、米国、欧州などで実施された。その結果、同薬はCAD患者において速やかな溶血抑制とヘモグロビン濃度の上昇、治療早期からの臨床的意義のある貧血と疲労の改善を示し、迅速かつ持続的な治療効果をもたらすことがN Engl J Med2021: 384: 1323-1334)に発表された。(関連記事「冷たい飲食物で胸痛! 寒冷凝集素症」)

補体の古典経路の活性を上流で阻害

 CADは、免疫系における補体の古典経路の活性化によって引き起こされるまれな慢性自己免疫性溶血性貧血。慢性的な貧血や重度の疲労感、溶血性発作などによりQOLの低下が見られ、血栓塞栓症や早期死亡のリスクが上昇するとされている。しかし、CADに対して承認された治療薬はない。

 スチムリマブは、古典経路の活性化の第1段階にある補体成分C1を構成するセリンプロテアーゼ(C1s)をターゲットとするヒト化モノクローナル抗体製剤で、古典経路の活性化を阻害することによりCADの疾患プロセスを阻止できる可能性がある。

 CARDINAL試験では、登録前6カ月以内の輸血歴を有する特発性CADの成人患者を対象に、スチムリマブ(用量:体重75kg未満6.5g、75kg以上7.5g)を治療開始日および7日目に静注投与し、その後は隔週で26週目まで継続した。

 有効性の複合主要評価項目はレスポンダーの比率。レスポンダーは、5~26週目の赤血球輸血やプロトコルで禁止された薬剤投与を実施せずに、治療評価時(23、25、26週目)に平均ヘモグロビン濃度が正常化(12g/dL以上)または平均ヘモグロビン濃度がベースラインから2g/dL以上上昇した者と定義した。

 副次評価項目はCADの経過評価に用いられる主な指標、すなわち、治療評価時におけるヘモグロビン濃度、ビリルビン濃度(溶血の指標)、乳酸脱水素酵素(LDH)、Functional Assessment of Chronic Illness Therapy(FACIT)疲労スコア(疲労によるQOLへの影響を評価する指標)についてそれぞれベースラインからの平均変化、輸血の実施状況とした。

54%が複合主要評価項目を達成

 24例が登録され、全例にスチムリマブが1回以上投与された。13例(54%)が複合主要評価項目を達成した。

 治療評価時におけるヘモグロビン濃度上昇の最小二乗平均値は2.6g/dL、平均ヘモグロビン濃度は1週目から上昇し、3週目から試験終了時まで11g/dL以上に維持された。

 平均ビリルビン濃度は1週目以降ほぼ正常値に達し、3週目から試験終了時まで正常値が持続した。

 FACIT疲労スコアの平均値は臨床的に意味のある減少が1週目までに認められ、試験期間を通じて維持された。

 17例(71%)が5週目から試験終了時まで輸血が不要であった。

 補体の古典経路の活性は、治療開始後1週間以内にほぼ完全に阻害され、それと同時にヘモグロビン濃度の上昇、ビリルビン濃度の低下、疲労感の減少が認められた。

 試験期間中に有害事象は22例(92%)で1件以上発現した。重篤な有害事象が7例(29%)で1件以上発現したが、試験責任医師によってスチムリマブとの因果関係はないと判定された。感染症による投与中止例はなく、髄膜炎菌感染症は認められなかった。

新しい有効な治療アプローチに

 同試験の結果、スチムリマブは慢性溶血を抑制、ヘモグロビン濃度を著明に上昇させて、QOLを改善し、ほとんどのCAD患者に速やかかつ持続的な治療効果をもたらすことが示された。以上の結果を踏まえて、Röth氏らは「補体の古典経路をターゲットとするスチムリマブがCAD患者にとって新しい有効な治療アプローチとなることが示された」と結論した。

 この試験結果を基に、同薬は日本で寒冷凝集素症治療薬として承認申請された。

(宇佐美陽子)