第21回日本抗加齢医学会が、6月25~27日に国立京都国際会館で開催される(ウェブ併催)。それに先立ち、4月20日にウェブメディアセミナーが開催され、学会長を務める京都府立医科大学大学院生体免疫栄養学寄付講座教授の内藤裕二氏が、最近の抗加齢医学分野における腸内細菌に関する研究を紹介しながら、日本人の抗加齢には地中海食と日本食のどちらが適しているかなど、今学会の見どころを解説した。

腸内細菌やその代謝物が宿主の神経保護、胆汁酸代謝などに関与

 内藤氏は「腸内細菌はその代謝物を宿主に供給し、種々の生存シグナルに影響を与える生命共同体と位置付けられる」と言う。例えば筋委縮性側索硬化症(ALS)モデルマウスを用いた研究から、腸内細菌叢の一種Akkermansia菌の代謝物であるニコチンアミドが神経保護作用を持つことが示唆され、実際にALS患者では血清や脳脊髄液中のニコチンアミドが減少している(Nature 2019; 572: 474-480)。

 また、食物によってAkkermansia菌を増殖させる研究や、Akkermansia菌の抗加齢効果を検討する研究も国内外で行われており、早老症モデルマウスへのAkkermansia菌移植によって、胆汁酸代謝が再活性化され寿命が延伸することなどが示されている(Nat Med 2019; 25: 1234-1242)。同氏らも、高脂肪食を与えたマウスの胆汁酸代謝と腸内細菌叢について解析し、緑茶に含まれるエピガロカテキンガレートによってAkkermansia菌が活性化、それにより胆汁酸代謝が改善したことを確認している(J Clin Biochem Nutr 2019; 65: 34-36)。 

 さらに、胆汁酸代謝が腸管や肝臓などに存在する末梢型の体内時計の制御に関わることも分かってきており(PLoS One 2016; 11: e0167319)、抗加齢医学領域では腸内細菌そのものだけでなく、代謝産物を用いた老化に対する新しいアプローチが進められているという。

地中海食への関心が高まり、エビデンスが蓄積

 次に内藤氏は「抗加齢医学の実践において、食・栄養学的アプローチは重要な課題であり、エビデンスの集積が必要」との考えを示し、地中海食に言及。地中海食は、糖尿病の発症抑制や心血管障害および炎症性腸疾患による死亡率の低下との関連が報告されており(Nutr Diabetes 2020; 10: 8Circulation 2009; 119: 1093-1100Clin Gastroenterol Hepatol 2021; 19: 87-95. e4)、地中海食の摂取によって腸内細菌叢が変化し、こうした疾患やイベントの抑制につながることが示唆されている(Nat Med 2021; 27: 333-343)。さらに、地中海食から赤身肉や加工肉を除き、緑の野菜やポリフェノールを多く取り入れた「グリーン地中海食」により肝臓脂肪が減少したことも示され(Gut 2021年1月18日オンライン版)、世界的に地中海食への関心が高まってエビデンスも蓄積されてきているという。

 だが、日本人における抗加齢医学の実践を検討する上で地中海食が適しているかは議論の余地があり、同氏は「日本人の腸内細菌叢を考慮した日本食研究の進展も望まれる」と述べ、今学会で日本人の腸内細菌叢には地中海食と日本食のどちらが適しているのか、なんらかの結論が出ることを期待した。

スムーズなウェブ視聴を助けるシステムも

 抗加齢医学分野において、腸内細菌叢や食・栄養をテーマに研究を続けてきた内藤氏は、今学会でもこれらのテーマに注目する。また、前回に続いてハイブリッド開催となることから、ウェブ参加者向けに「Microbiome track」や「Food/Nutrition track」など、テーマに沿って演題をまとめて表示する「11トラックシステム」を制作中だという。同学会ウェブサイトに11のトラックが表示され、プログラムを何度も検索する手間を省く仕組みだ()。

 同氏は「ウェブ参加者の方にも、学会をスムーズに楽しんでいただけるような工夫を検討している。高名な先生方にも講演をお願いしており、ぜひ参加してほしい」と呼びかけた。

表. 11トラックシステムのテーマ

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(内藤裕二氏提供)

(須藤陽子)