鹿児島県霧島市で東京五輪聖火ランナーを務める三浦智也さん(19)は、全身の筋肉が萎縮する難病、筋ジストロフィーを患う。一日の半分は呼吸器を手放せないが、「スポーツは誰でも楽しめることを伝えたい」との決意を胸に27日、200メートルを電動車いすで駆け抜ける。
 三浦さんが発症したのは幼少期。病状は徐々に進行し、小学4年生からは車いすでの生活を余儀なくされた。体育の授業は常に見学。「もう自分にはスポーツはできないんだ」と感じていたが、中学卒業後に通った特別支援学校で、障害を持つ先輩が車いす競技「スラローム」をプレーする姿を見た時、考えは一変した。
 パラスポーツにのめり込み、3年生の時には県障害者スポーツ大会に出場、スラローム種目で2位に入賞した。通所する療育施設で三浦さんを担当していた理学療法士、白川栞里さん(26)は「大会に出てからは考えがとても前向きになった」と三浦さんの変化を振り返る。
 聖火ランナーの募集はテレビで知った。応募方法をインターネットで調べ、両親や白川さんに相談すると、挑戦を全面的に後押ししてくれた。父幸一さん(60)は「思い出に残ればそれでいい。似たような境遇の子どもたちの励みにもなれば」と願う。
 新型コロナウイルスに感染すれば命に関わるだけに、五輪の延期後は「やっぱり走れないのか」と弱気になることもあったという三浦さん。寝る時だけだった呼吸器が、この1年で食事する際にも必要になった。辞退も「一瞬よぎった」が、支えてくれた人たちの期待と、走ることで伝えたい思いに突き動かされた。
 三浦さんにとって200メートルは簡単な距離ではないが、施設のスタッフと練習を重ねて不安を克服してきた。「今は五輪に関われていることがうれしい」。難病と闘うランナーは晴れ舞台を心待ちにしている。 (C)時事通信社