米・ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の医薬品部門であるヤンセンが開発中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する単回投与型のAd26.COV2.Sワクチンについて、有効性と安全性を検証した国際第Ⅲ相二重盲検ランダム化比較試験ENSEMBLEの結果がN Engl J Med2021年4月21日オンライン版)に発表された。中等症~重症または重篤な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を抑制する効果は投与後14日以降で66.9%、28日以降で66.1%であった。また、B.1.351系統のSARS-CoV-2を含む変異株が高い割合を占めている南アフリカにおいて重症化に対する高い予防効果が確認された。同ワクチンをめぐっては、今年(2021年)1月29日、第Ⅲ相試験の中間解析結果が発表され、高い有効率が報告されていた。

南米、南アフリカ、米国の4万人超を対象に解析

 Ad26.COV2.Sワクチンは1回接種タイプのワクチンで、アストラゼネカ製のワクチンと同じウイルスベクターワクチンである。SARS-CoV-2遺伝子をベクターを用いて投与し、蛋白質をつくらせて免疫を獲得させる作用がある。

 今回実施された国際第Ⅲ相二重盲検ランダム化比較試験は、2020年9月21日に登録を開始し、2021年1月22日をデータカットオフ日とした。18歳以上の成人4万3,783例(年齢中央値52歳、女性45.0%)を対象とし、60歳以上の高齢者が1万4,672例含まれていた。試験では対象者を1:1の比率でランダムに割り付け、そのうちSARS-CoV-2陰性だった3万9,321人に対してワクチン(1万9,630人)またはプラセボ(1万9,691人)を単回投与した。

 被験者は南米(アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、メキシコ、ペルー)、南アフリカ、米国から登録され、ベースラインでの人口統計学的特性や合併症は両群で同様だった。追跡期間の中央値は58日で、参加者の55%に対して少なくとも8週間の追跡を行った。

重度・重篤のCOVID-19に対しより高い予防効果

 主要評価項目は、事前にSARS-CoV-2陰性と確認された被験者におけるワクチン接種から14日および28日以降の中等症~重症または重篤なCOVID-19の発症抑制効果とした。併せて安全性も評価した。

 検討の結果、中等症~重症および重篤なCOVID-19に対する有効率は、接種後14日以降で66.9%(ワクチン群116例、プラセボ群348例、95%CI 59.0~73.4%)、および28日以降では66.1%(同66例、193例、55.0~74.8%)だった。

 年齢層別の解析では、接種後28日以降のCOVID-19に対する有効率は年齢層間で同等だったが、投与後14日以降で見ると18~59歳で63.7%、60歳以上で76.3%と高齢者の方が高かった。

 重症度別で見ると、中等症よりも重症または重篤なCOVID-19に対する予防効果が高かった。接種後14日以降の有効率は、中等症では64.8%(95%CI 55.8~72.2%)、重症または重篤なCOVID-19で76.7%(同54.6~89.1%)だった。接種後28日以降は、それぞれ、62.0%(同48.7~72.2%)、85.4%(同54.2~96.9%)だった。

変異株が主流の南アフリカでの有効率は52.0~81.7%

 さらに、SARS-CoV-2の変異株に対する有効性も確認された。SARS-CoV-2感染者から得られたPCR検査陽性となった512の検体の中間配列データでは、20H/501Y.V2変異(B.1.351)は主に南アフリカで検出され(91配列中86、94.5%)、E484K変異はブラジルで検出された(124配列中86、69.4%)。

 有効性を国別で解析すると、20H/501Y.V2変異を有する割合が高い南アフリカでは、中等症~重症および重症~重篤なCOVID-19に対する接種後14日以降の有効率はそれぞれ52.0%、73.1%、28日以降ではそれぞれ64.0%、81.7%であり、有効性が維持されていた。同様に、ブラジルではワクチン接種後14日以降の有効性はそれぞれ66.2%、81.9%、28日以降ではそれぞれ68.1%、87.6%で高い効果が保持されていた。

約5割に注射部位の疼痛、4割に頭痛や倦怠感が出現

 安全性に関しては、ワクチンまたはプラセボを接種後7日間で、ワクチン群ではプラセボ群よりも多くの有害事象が報告され、60歳以上の高齢者よりも18~59歳の若年者・中高年者で多かった。

 有害事象で見られた症状は、ワクチン群の48.6%に注射部位の疼痛が認められ、全身反応で最も頻度の高かったのは頭痛(38.9%)で、倦怠感(38.2%)、筋肉痛(33.2%)、悪心(14.2%)などが続いた。

 COVID-19に関連するものを除く重篤な有害事象は、ワクチン群2万1,895例のうち83例(0.4%)、プラセボ群2万1,888例のち96例(0.4%)で同等だった。そのうち、静脈血栓塞栓症はワクチン群で11例、プラセボ群で3例と両群で不均衡な結果だったが、ほとんどはイベントに寄与した可能性のある根本的な疾患や素因があった。

 発作(ワクチン群4例、プラセボ群1例)、耳鳴り(同6例、0例)も両群で不均衡であったが、ワクチンとの因果関係は特定されていない。また、ワクチン群での死亡は3例で、いずれもCOVID-19との関連は確認されなかった一方で、プラセボ群の死亡16例のうち5例はCOVID-19関連死であった。

 以上を踏まえ、研究グループは「Ad26.COV2.Sワクチンは、症候性のCOVID-19および無症候性のSARS-CoV-2感染を予防し、入院や死亡につながる重症または重篤な症状に対する予防効果が確認された。今回確認された安全性のデータは、他のCOVID-19ワクチンの第Ⅲ相試験の結果と同等と考えられる」と結論した。さらに、SARS-CoV-2変異株がCOVID-19の蔓延を引き起こしている南アフリカやブラジルなどを含む国においても、重篤なCOVID-19に対する高い予防効果が得られた。

(今手麻衣)