新型コロナウイルス対策の「切り札」とされるワクチン接種を加速するため、菅義偉首相が自衛隊による「大規模接種センター」設置を打ち出した。開幕が7月に迫る東京五輪や秋までにある衆院選を見据え、遅々として進まない接種に危機感を強めたためだ。ただ、会場が東京都と大阪府だけで、野党は公平性を欠くと批判。与党からも対応の遅れを問題視する声が上がった。
 「ワクチンは感染対策の決め手だ。地域の接種を国としても強力に後押ししたい」。首相は27日の閣議後、岸信夫防衛相にこう指示した。
 日本の接種は諸外国に比べて遅れが顕著だ。海外の集計サイトによると、25日現在の人口に対する接種率は1.45%で、60%超と世界一のイスラエルに大きく引き離され、約50%の英国を筆頭とする先進7カ国でも最下位。南米やアジアの一部にも後れを取る。海外製に頼るワクチン輸入の遅れと、接種に当たる医師・看護師不足が主因だ。
 ワクチン供給の総合調整に当たる河野太郎規制改革担当相は26日のテレビ番組で、「大型連休明けからは毎週1000万回分ずつ入ってくる」と表明。医師については「医師会の動きが鈍い」(閣僚)として自衛隊の医官と看護官を活用することにした。防衛相を務めた河野氏の発案だという。
 政府はこれまで、接種の実務は自治体任せだった。方針転換の背景にはコロナ対応への国民の不満がある。自民党が全敗した25日の衆参3選挙では、「政治とカネ」の問題と並ぶ逆風の要因とみられている。首相は翌26日、全敗の受け止めを記者団から質問されると、聞かれてもいないのに高齢者向けワクチン接種に言及し、7月末までの完遂に決意を強調。再選が懸かる秋の党総裁選を含め、政治決戦に臨む政権運営の「急所」と捉えていることを印象付けた。
 自民党は接種促進で「国民に安心感が広がる」(幹部)と期待を込め、公明党幹部も「高齢者の接種が終われば雰囲気は落ち着く」との見方を示す。自民各派は27日の事務総長会議で「政府をサポートしていく」と確認した。
 これに対し、立憲民主党の安住淳国対委員長は同日の党会合で「なんで東京と大阪だけなのか。(7月の)都議選対策としてのパフォーマンスはやめてほしい」とあげつらい、党幹部は「公平性の原則に反する」と指摘した。自民党中堅も「対応が遅い。年明けには計画して動き始めなければいけなかった」と苦言を呈し、若手は「これで進まなかったら目も当てられない」と漏らした。 (C)時事通信社