国内初となる片頭痛発作を抑制する抗体医薬ガルカネズマブ(商品名エムガルティ)が4月26日に発売された。厚生労働省は、同薬の対象患者および医師・医療機関の要件、使用に際しての留意事項を示した最適使用推進ガイドライン(GL)を策定し、各自治体の関係部署に通知した。同GLでは、片頭痛の発作回数を減らすなど高い有効性が得られる一方で、アナフィラキシー、血管浮腫、蕁麻疹などの重篤な過敏症反応が現れることがあるとして、副作用が発現した際に必要な対応が可能な一定の要件を満たす医師・医療機関で使用するよう求めた。また、患者選択に関して投与の要否の判断するための基準を挙げた。

片頭痛に深く関与するペプチドを特異的に阻害

 日本国内での片頭痛の有病率は8.4%で、患者数は約840万人に上ると報告されている。脳の片側または両側に心臓の鼓動に合わせてずきずきするような中等度~重度の痛みを感じ、日常的な動作により頭痛が増悪することが特徴である。発作は4~72時間持続し、随伴症状として悪心や嘔吐、光過敏症、音過敏を伴う場合がある。患者はQOLが低下し、社会に及ぼす経済的影響も大きいとされる。発症抑制薬の使用により、発作頻度や重症度などが軽減すれば、生活への支障の軽減、ひいては社会的損失(経済損失)の縮小につながる可能性がある。

 ガルカネズマブは片頭痛に対するヒト化抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)モノクローナル抗体。CGRPは三叉神経節や硬膜上の三叉神経末梢に存在する神経ペプチドで、過剰に発現すると血管拡張作用や神経原性炎症を介して片頭痛発作を引き起こす。同薬はCGRPに特異的に結合して、CGRPの受容体への結合を阻害する。初回に240mgを皮下投与し、以降は1カ月間隔で120mgを皮下投与する。

臨床経験5年以上などが医師要件に

 ガルカネズマブの最適使用GLでは、①同薬を使用できる施設要件②投与対象となる患者③投与に際しての留意事項-などを示し、遵守を求めた。

 同薬の安全性に関しては、添付文書の「重大な副作用」の欄に「重篤な過敏症反応として、アナフィラキシー、血管浮腫、蕁麻疹などが現れることがある(頻度不明)。異常が認められた場合には投与を直ちに中止し、適切な処置を行うこと」「重篤な過敏症反応は本剤投与数日後においても現れることがあり、反応が長引くことがある」との記載がある。また、ガルカネズマブの成分に対し重篤な過敏症の既往歴を有する者は投与禁忌となっている。それ以外の副作用としては、注射部位反応(14.9%)、注射部位疼痛(頻度は10.1%)、回転性めまい、便秘、瘙痒症、蕁麻疹(いずれも1%未満)、発疹(頻度不明)などが報告されている。

 そのため、同GLでは、同薬を使用する医師の要件として、投与後に重篤な副作用が発現した際に適切に対応するため、①頭痛を呈する疾患の診療に5年以上の臨床経験を有している②ガルカネズマブの効果判定を定期的に行った上で、投与継続の是非についての判断を適切に行うことができる③日本神経学会、日本頭痛学会、日本内科学会(総合内科専門医)、日本脳神経外科学会のいずれかの専門医の認定を有している―とした。

 投与対象患者については①国際頭痛分類(ICHD第3版)を参考に十分な診療を実施し、前兆のあるまたは前兆のない片頭痛の発作が月に複数回以上発現、または慢性片頭痛であることが確認されている②投与開始前3カ月以上に1カ月当たりの片頭痛または片頭痛の疑いが起こった日数(MHD)が平均4日以上ある③睡眠、食生活の指導、適正体重の維持、ストレスマネジメントなどの非薬物療法および片頭痛発作の急性期治療などを既に実施しているにもかかわらず、日常生活に支障を来している④国内で承認済みの片頭痛発作の発症抑制薬(プロプラノロール、バルプロ酸ナトリウム、ロメリジンなど)のいずれかが効果不十分、または忍容性が低い、投与禁忌または副作用などの点から安全性への強い懸念があるといった理由で使用または継続できないーとした。

投与3カ月後に有効性を評価、効果がなければ中止を考慮

 なお、ガルカネズマブの投与開始後は3カ月(3回投与後)を目安に有効性を評価する。症状の改善が見られない、または頭痛発作発現の消失や軽減などによって日常生活に支障を来さなくなった場合は、投与中止を考慮する必要があるとした。また、日本人を対象とした臨床試験において、同薬の18カ月を超える使用経験はない。

 投与時の留意事項としては①重篤な過敏症の既往歴を有する患者は投与禁忌②アナフィラキシー、血管浮腫、蕁麻疹などの重篤な過敏症が報告されているため、投与後に異常が認められた場合には直ちに中止するなど適切な処置を行う(重篤な過敏症反応は投与数日後に出現することがあり、反応が長引くことがある)③医薬品リスク管理計画(RMP)を熟読し、安全性検討事項を確認する④片頭痛発作の発症抑制薬であるため、治療中に頭痛発作が生じた場合には、必要に応じて急性期治療薬を用いるよう患者に指導するーなどの遵守を求めた。

6カ月の投与で約半数の患者で片頭痛発作が半減

 他の薬剤2~4剤で効果不十分な片頭痛患者462例(日本人42例を含む)を対象としたガルカネズマブの国際共同第Ⅲ相試験CGAW/CONQUERにおいて、ガルカネズマブ投与群では1カ月当たりの片頭痛発症日数(3カ月平均)が4.1日減少し、プラセボ群(1.0日減少)と比べ有意に高い効果が認められた。効果は3カ月間持続し、持続期間についてもプラセボ群とり有意に長かった。有効性は反復性片頭痛、慢性片頭痛患者でも認められた。

 また、反復性片頭痛患者を対象とした国内第Ⅱ相試験CGANでは、ガルカネズマブ投与群では1カ月当たりの片頭痛発症日数(6カ月平均)が3.6日減少し、プラセボ群(0.6日減少)との有意差が確認された。効果は6カ月持続していた。プラセボ群と比べ投与1週目から片頭痛日数の減少に有意差が認められるなど、速やかな効果が示された。

 さらに、1カ月当たりの片頭痛日数がベースライン値から50%以上減少した患者の割合(50%反応率)は、ガルカネズマブ投与群で49.8%(6カ月平均)と半減した。また、75%反応率はプラセボ群の9.6%(同)に対しガルカネズマブ投与群では25.5%(同)、100%反応率はそれぞれ2.8%(同)、9.0%(同)であり、1割弱の患者で片頭痛発作が消失していた。

(小沼紀子)