政府が、東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川4都県)の企業に勤めたまま地方に移り住む「転職なき移住」の促進に向け動きだしている。新型コロナウイルスの感染拡大に伴いテレワークが急速に広まったことを追い風に、新たな人の流れをつくり、東京一極集中の是正を目指す。
 「これまで地方移住の最大のネックは転職にあったが、この課題をクリアできる点で画期的だ」。地方でのテレワーク推進策を4月に提言した有識者会議座長の増田寛也日本郵政社長は、テレワークを活用した移住の意義をこう強調した。
 内閣府が2020年12月に実施した調査によると、地方移住の最大のハードルは「仕事や収入」。移住に興味がある人の46%が不安要素に挙げた。一方、大都市圏での新型コロナ感染拡大の影響で、移住への関心は高まっている。総務省の住民基本台帳人口移動報告では、20年7月から21年2月まで、東京都からの転出超過が8カ月続いた。3月は進学や就職に伴い転入超過となったが、20年度の転入超過は19年度に比べ大幅に減った。
 政府はこの機会を捉え、テレワーク環境の整備を急ぐ。地方でのサテライトオフィス開設を後押しする交付金制度を創設し、100億円の予算を確保。自治体による整備や既存施設への企業誘致などを財政面で支える。今春の応募には138自治体が手を挙げ、40億円の交付が決まった。
 今後、移住希望者や自治体、企業関係者らがワンストップで情報を見られるポータルサイトを立ち上げる。テレワークに積極的に取り組む企業を増やすため、21年度中に表彰制度も設ける予定だ。内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局の担当者は「転職なき移住は東京の仕事を地方で続ける新しい概念。取り組みが進むよう積極的に働き掛けたい」と話す。 (C)時事通信社