【ロンドン時事】イングランドなど四つの地域から成る英国が分裂する―。そんなシナリオが一定の現実味を持って語られ始めた。欧州連合(EU)からの離脱と新型コロナウイルスの大流行が国の求心力を弱めたことが背景にある。北部スコットランドと南西部ウェールズでは6日、自治議会選挙が5年ぶりに行われる。争点は英国からの独立だ。
 スコットランドでは、独立を目指す自治政府与党スコットランド民族党(SNP)が議席の積み増しで過半数をうかがう。勝利し、独立の是非を問うた2014年の住民投票を23年後半までに再実施する構えだ。14年の投票では独立反対が55%で賛成45%を上回った。世論調査ではこの1年ほど、独立賛成と反対が10ポイント差以内で推移。昨年は一貫して賛成が優勢だった。
 SNPは公約で、経済政策の多くを英政府が支配していると批判。「未来を自らの手に取り戻すことで新しいスコットランドが築ける」と支持を訴えた。「EU離脱から逃れる権利がある」と独立後のEU加盟もうたった。
 スコットランドの有権者の6割超は16年の国民投票でEU離脱に反対した。現地世論の動きに詳しいストラスクライド大学のジョン・カーティス教授は、独立支持の高まりについて「EU離脱が影響したのは明らかだ」と述べた。
 同教授は、自治政府が英政府に比べ、コロナ禍にうまく対応したと認識されていることも要因とみる。このことはウェールズにも当てはまる。
 ウェールズはスコットランドに比べて民族主義色は弱い。だが14年の世論調査で5%だった独立支持は年々上昇し、3月に公表された調査では39%に上った。「コロナ対応で自治政府の能力をより深く認識した」(英紙ガーディアン)ことが影響したとみられている。
 議会選では与党労働党が第1党を維持する公算だが、過半数に届かず、独立を目指すウェールズ民族党との協力を余儀なくされる可能性がある。同党は独立を問う住民投票の26年までの実施を目指している。
 さらに、1月にタイムズ紙が伝えた英領北アイルランド住民を対象にした世論調査では、アイルランドとの統一を支持する人が42%で、英帰属支持派に5ポイント差と迫っている。 (C)時事通信社