自民党内で、憲法改正に向けた機運がしぼみつつある。政権が新型コロナウイルス対応に追われていることに加え、自ら旗を振った安倍晋三前首相に比べ、菅義偉首相が消極的なためだ。ただ、改憲論議の前提となる国民投票法改正案の審議は進展し、今国会成立へ与野党の調整が大詰めを迎えている。
 安倍氏は首相在任中、国会演説などで改憲への意欲を示して、与野党に論議を強く促してきた。これに対し、菅首相は言及自体が少なく、3月の自民党大会では改憲を「党是」としながらも具体像は語らず、「まずは国民投票法改正案成立を目指す」と述べるにとどめた。
 こうした現状に、自民党憲法改正推進本部の幹部は「首相に『改憲論議をする』と言ってほしい。支持者が求めている。はっきり打ち出さないと次の衆院選は危ない」といら立ちをあらわにした。別の同本部役員も「安倍氏にあった熱量が首相にはない」と漏らした。
 だが、新型コロナの感染拡大で、推進派も心境が変化している。閣僚経験者は「今後半年はコロナを克服できるかという時期だ。改憲なんて言ったらぼこぼこに批判される」と指摘。当面は、党が各地で開くふるさと対話などを通じて、機運醸成に努めるべきだとの考えを示した。
 一方、国民投票法改正案をめぐっては、立憲民主党が4月28日、CM規制や外国人寄付規制について「3年をめどに法制上の措置を講ずる」と付則に明記する修正案を自民側へ提示。与党が受け入れれば、5月6日の衆院憲法審査会で採決に応じる考えだ。
 立憲はこれまで採決を拒んできたが、秋までに行われる衆院選での保守票の取り込みや、護憲の共産党と同一視されるのをかわす狙いがあるとみられる。また、コロナ禍を受けて緊急事態条項創設を訴える声が与野党から出ており、改憲論議の進展を回避する思惑もある。立憲幹部は「修正案をのませれば発議を3年間封じられる」と語った。
 自民、公明両党の幹部らは4月30日、対応を協議したが結論は出なかった。連休中も調整を続けるが、出席者の一人は「3年はのめない。5月6日に採決はする」と語った。 (C)時事通信社