【イスタンブール時事】中国・新疆ウイグル自治区での迫害からトルコに逃れてきたウイグル族の人々の間で、強制送還への懸念が広がっている。新型コロナウイルスのワクチン供給などで対中依存を強めるトルコでは、ウイグル族が突然身柄を拘束される例が後を絶たない。2017年に中国と署名した犯罪人引き渡し条約が近く国会で批准される可能性があり、不安は現実化しかねない状況だ。
 ウイグル族と民族上のつながりが深いトルコではウイグル族5万人以上が暮らす。政府は従来、亡命者に市民権を付与するなど積極的に受け入れてきたが、17年の条約署名以降風向きが変わった。今年1月、母親が「テロ容疑」で一時拘束されたアリエ・ベキルさん(20)は「全く心当たりがなく、とても傷ついた。今のトルコは安全だと感じられない」と語った。
 トルコ在住のウイグル族から相談を受ける弁護士のイリヤス・ドアン氏は「条約が発効していない段階でも、中国は身柄拘束の圧力を強めているようだ」と推測する。「批准されれば、状況はさらに悪化するだろう」と警戒している。
 通貨リラ下落に伴うインフレで苦しむトルコにとって、中国は軽視できないパートナーだ。トルコは中国と通貨スワップ協定を結び、通貨防衛のための為替介入などに必要な原資の確保につなげている。
 中国のワクチンについて、コジャ保健相は4月30日、「4月末までに接種1億回分のワクチンが到着するはずだったが(一部しか)届いていない」と述べた。現時点での供給量は想定の4分の1ほどにとどまっているとみられ、トルコ国内には「ワクチンを通じた中国の脅しではないか」(野党議員のヤブズ・アイルアリオール氏)と疑う見方がある。 (C)時事通信社