【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)は9日、市民参加型で幅広くEU改革を議論する「欧州の未来会議」を開始する。欧州委員会と欧州議会、加盟国共同で改革案の来春の取りまとめを目指す。新型コロナウイルス禍がいまだ収束しない中、多くの課題が露呈したEUの保健政策の権限強化が焦点の一つとなりそうだ。
 「保健分野で欧州(連合)はもっと権限が必要だ。条約改正がいるかもしれない」。ドイツのメルケル首相は4月下旬の関連イベントで、EUの基本条約改正の必要性に踏み込んだ。
 EUでは、金融や通商政策と異なり保健政策は各加盟国に権限が残る。欧州委がEUの共通施策を打ち出しても採用するか否かは各国の判断。コロナ危機では規制導入や医療物資確保、ワクチン接種で足並みがそろわず数々の混乱を招いた。
 メルケル氏は「ウイルスは国境を尊重しない」と政策協調の重要性を主張。自身は今秋に引退を控えるが、同じ独出身のフォンデアライエン欧州委員長が掲げている「欧州保健同盟」構想を支持する姿勢を示した。
 ただ、加盟国には権限を失う欧州統合深化への慎重論は根強い。また、多大な時間と労力を要するため、保健政策に限らず条約改正には多くの国が及び腰なのが実態だ。
 未来会議では、2019年に難航した欧州委員長選出の方法や、EU外交の全会一致原則の見直しなども焦点で、これらも突き詰めれば条約改正につながる。本格改正なら09年発効のリスボン条約以来となるが、EUが3月に出した共同声明では改正への言及は避けた。
 同会議は市民からオンラインで募った意見を集約する形で進める。欧州委や欧州議会は「市民の意見次第だ」と条約改正も排除しない立場を強調するものの、改革議論が深まるかは未知数だ。 (C)時事通信社