肺がんの最大の危険因子は喫煙であるが、非喫煙者でも肺がんに罹患することがある。国立がん研究センター社会と健康研究センターセンター長の津金昌一郎氏らは、多目的コホート研究JPHC Studyのデータを用いて、日本人非喫煙女性における肺がんの危険因子を検討。その結果、閉経年齢、初経から閉経までの期間、閉経を迎えた状況が肺腺がん罹患リスクに関連することが明らかになったと、Cancer Epidemiol Biomarkers Prev2021年4月7日オンライン版)に発表した。

非喫煙女性4万2,000例超を21年間追跡

 女性の肺がんは、男性に比べ非喫煙者、組織型別には肺腺がんが多いと報告されている。この男女差の要因として、女性特有の生殖関連要因やホルモン薬の使用などが考えられることから、津金氏らは過去に、これらの要因と女性の肺がんとの関連を検討。初経から閉経までの期間の長さ、ホルモン薬の使用が肺がん罹患に関連することを報告している(Int J Cancer 2005; 117: 662-666)。しかし、追跡期間が8~12年と短く、肺がん罹患者が153例と少なかったため肺がんの組織型別の検討は実施していなかった。

 そこで同氏らは今回、追跡期間を21年に延長し、初経年齢や出産回数など女性特有の生殖関連要因が肺がんの罹患に及ぼす影響を組織型別に検討した。解析対象は、肺がんの最大の危険因子である喫煙の影響を除外するため、JPHCに参加した40~69歳の非喫煙女性4万2,615例とした。追跡期間中に400例が肺がんに罹患。うち305例が肺腺がんだった。

閉経年齢51歳以上の肺腺がんリスクは、47歳以下の1.41倍

 年齢、居住地域、居住地(市・それ以外)、BMI、飲酒状況、受動喫煙、余暇の運動、肺がんの家族歴、喘息の既往歴を調整した上で解析。その結果、閉経年齢が51歳以上の女性では、47歳以下の女性と比べ肺腺がんの罹患リスクが1.41倍と有意に高く〔ハザード比(HR)1.41、95%CI 1.01~1.96、図-左〕、閉経年齢が増すとともにリスクの上昇が認められた(傾向性のP=0.04)。しかし、肺がん全体、肺腺がん以外の肺がんとの関連は認められなかった。

図.女性関連要因と肺腺がん

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(国立がん研究センタープレスリリースより引用)

 同様に、初経から閉経までの期間が長い(36年以上)女性では、短い(32年以下)女性に比べ肺腺がん罹患リスクが1.48倍と有意に高かった(HR 1.48、同1.07~2.06、傾向性のP=0.01、図-中)。

 さらに、自然閉経を迎えた女性、外科的手術により閉経した女性でも、閉経前の女性に比べリスクはそれぞれ1.99倍、2.75倍と有意に高かった(自然閉経:HR 1.99、95%CI 1.02~3.88、P<0.05、外科的手術:同2.75、1.33~5.67、P<0.05、図-右)。

授乳経験ありで肺腺がん以外の肺がんリスク低減

 一方、授乳経験のある女性では、肺腺がん以外の肺がんリスクが0.51倍と低かった(HR 0.51、95%CI 0.28~0.92)。出産経験の有無、出産回数、初経年齢、初産年齢、月経周期には、肺腺がんリスクとの関連は認められなかった。

 今回の研究では、初経から閉経までの期間や閉経年齢が、肺腺がんと正相関することが示された。津金氏らは「正常肺や肺がん組織にはエストロゲン受容体があることから、肺がんの発生にはエストロゲンの関与が指摘されている。初経から閉経までの期間が長いということは、高濃度のエストロゲンに長期間さらされるということであり、それが肺がんリスクの上昇に関連したのではないか」と考察。「エストロゲン受容体の分布は肺がんの組織型によって異なるとされ、肺腺がんとの関連がより顕著であった可能性がある」と付言している。

 さらに、今回の結果とは逆に、閉経年齢が高いと肺腺がんリスクが低下するとの先行研究に触れ、「先行研究の件数は限られており、人種や生活習慣の違いなども考えられる」と推察している。

(比企野綾子)