新型コロナウイルスの感染拡大で、大規模な院内感染が起きた永寿総合病院(東京都台東区)の看護師3人が4月、漫画やイラストを交えて当時を描いた書籍「新型コロナウイルス感染症アウトブレイクの記録」(医学書院)を出版した。「第4波」の影響が広がる中、著者の一人で副看護部長の高野ひろみさん(53)は「経験を参考にしてもらえたら」と話している。
 400床を有し、地域の中核を担う同病院では昨年3月、患者や看護師らの院内感染が判明。従来の感染症対策マニュアルで対応をしたが、新型ウイルスはとどまることなく拡大し、200人以上が感染、43人が死亡した。
 本には、過酷を極めた現場の様子が臨場感たっぷりに描写されている。職員らはよく触れるドアを開けっ放しにするなど清潔区域を維持。刻々と状況が変化する中で、壁に紙を貼り付け情報共有する工夫も重ねた。トイレに行く際、防護服の裾が便器に触れないようにズボンを下ろすよう指示も出されたといい、当時の写真をもとに描かれたイラストも生々しい。
 不安を抱く患者、家族の様子や、差別に追い詰められる看護師らの苦悩も盛り込んだ。
 当時は「頑張れ」と書いた横断幕を地元有志が作成したり、総菜やアイスクリームを差し入れてくれたりする人もいた。高野さんは「たくさんの支援が支えだった。出版を通じ、感謝の気持ちも伝えたかった」と話す。
 突然の院内感染に手探りで臨んだ経験から、「中小規模の病院では対応が分からないのではないかと思った」と執筆の動機を語る高野さん。「(コロナとの戦いは)大変だが、必ず収束の時は来る。めげずに頑張るしかない」。本がその一助になることを願っている。 (C)時事通信社