新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行がいまだ収束しない中、国内では医療体制の逼迫によるがん患者の検診および診療の制限への懸念が高まっている。日本肺癌学会は、COVID-19が肺がん診療に及ぼす影響を検討するために、全国の医療施設に対してアンケートを実施。約8,600人の新規患者が診断と治療の機会を逸した可能性があると、5月1日に同学会公式サイトで報告した。

肺がん治療の新規患者が6.6%減

 アンケート内容は、国内でCOVID-19患者が確認される以前の2019年1~10月と、確認後の2020年1~10月の各月における治療法別新規肺がん治療患者数。日本肺癌学会の評議員が所属する施設(181施設)とがん拠点病院(309施設)の計490施設に対して、2020年10月22日に調査票を配信し、2021年1月20日までに124施設(回収率25.3%)から回答を入手。十分なデータが得られた118施設について解析した。

 その結果、肺がん治療の新規患者数は2019年の1万9,878人に対し、2020年は1万8,562人と6.6%減少していた。免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1/L1抗体)と化学療法を併用した患者のみ1,900人から2,099人(+10.5%)に増加していたが、手術や薬物療法全体ではそれぞれ6.0%、8.6%減少していた()。

表. 118施設における新規肺がん治療患者数の変化

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*薬物療法小計:化学療法のみ + 分子標的治療 + 抗PD-1抗体単独 + 抗PD-1/L1抗体+化学療法

(日本肺癌学会公式サイトより)

 特に、COVID-19治療患者数が多い施設で、肺がん治療患者数が減少する傾向が顕著だった〔COVID-19治療患者数0~5例(33施設):肺がん治療患者数-4.6%、同101例以上(25施設):-8.6%〕。

 また、エリア別では関東、北陸、中部で肺がん治療患者数が-7.6~-9.7%、施設形態別では公立病院が-14.3%と大きく減少していた。

 同学会は「原発性肺がんの年間罹患数は約13万人と推定されていることから、6.6%に当たる約8,600人が、診断や治療の機会を逸したと考えられる」と指摘している。

(須藤陽子)