新型コロナウイルスの変異株が猛威を振るう大阪府では、病床逼迫(ひっぱく)により入院できないコロナ患者が急増し、入院率が1割まで低下した。自宅で容体が急変して死亡する人も後を絶たず、関係者からは「悪循環に陥っている」と悲痛な声が漏れる。想定を上回る重症者の発生に対し、医療現場では懸命の対応が続いている。
 大阪大医学部付属病院(吹田市)は1日、府の要請を受けて30床ある集中治療室(ICU)全てを重症病床に転用。10日までの緊急措置で、一部の手術を延期するなどして対応する。国内有数のがん拠点病院「大阪国際がんセンター」(大阪市)も10床あるICUを閉鎖し、うち数床で重症者を受け入れ始めた。
 こうした措置により、府内の重症病床は3月以降の「第4波」で140床増え、今月6日時点で364床が稼働。それでも患者の増加ペースに追い付かず、50人を超す重症者が軽症・中等症病床に入院する。自宅療養中の患者も約1万3000人に達し、先月30日以降、全感染者のうち入院できる患者の割合は10%にまで低下している。
 一方、保健所業務も多忙を極める。府内のある保健所長は、自宅やホテル療養中に重症化するケースが増えていると指摘。「病床がいっぱいで軽症・中等症病床でも入院できれば幸運な状況だ」と明かす。
 感染者家族への支援や、行動歴を聞き取る疫学調査が滞り、患者から苦情も寄せられる。無症状のまま感染を広げる人も多く、同所長は「感染拡大が危機感として世間に伝わっていない」と訴える。
 府内では3月以降、17人のコロナ患者が自宅で死亡した。救急搬送が難航し、入院先が見つからない患者を一時的に搬送するため、大阪市内に2カ所開設された待機ステーション(18床)には、今月6日までに76人が運び込まれた。
 府は、自宅やホテルで療養する中等症患者の重症化を防ぐため、肺炎症状を抑えるステロイド薬「デキサメタゾン」の処方基準を医師会などに周知。往診やオンライン診療強化なども急ぐものの、事態の打開には至っていない。 (C)時事通信社