自民党と野党の一部から、憲法改正で緊急事態に備えるべきだとの主張がここへきて相次いでいる。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、秋までに行われる衆院選へ危機管理や改憲に取り組む姿勢をアピールするためだ。政府・自民党にはなかなか効果が出ない感染対策へのもどかしさもあるようだ。一方、立憲民主党などは反発している。
 「医療逼迫(ひっぱく)が起きたらコロナ専用病院をつくる必要があるが、今のスキーム(仕組み)では不可能だ」。自民党の下村博文政調会長は3日、東京都内で開かれた改憲派の集会でこう指摘し、緊急事態条項創設を訴えた。
 日本維新の会の足立康史氏も同じ集会で、複数の知事が法的根拠のない独自の緊急事態宣言を出したことに触れ、現状のままでは「権利や自由の制限がなし崩し的に恒常化される」と主張。国民民主党の山尾志桜里氏は6日の衆院憲法審査会で「事前にルールを定めるべきだ」と述べた。
 改憲論議の前提となってきた国民投票法改正案は、11日に衆院を通過し今国会で成立する見通し。国民の間で改憲機運が醸成されていない中、「緊急事態」を起爆剤に議論を本格化させる思惑がありそうだ。
 菅義偉首相も7日の記者会見で、「緊急事態への国民の関心が高まっている」との見方を示し、私権制限に言及した。
 コロナ禍で欧米ではロックダウン(都市封鎖)など厳しい私権制限を伴う措置が取られた。一方、コロナ対応の特別措置法に基づく日本の緊急事態宣言で不要不急の外出自粛要請は、あくまで「お願いベース」(自民党幹部)で強制力はない。
 これに対し、立憲の枝野幸男代表は3日の護憲派集会で「必要な対策を打てないのは政府の政治判断(が原因)だ。憲法に押し付けるのは許されない」と批判。共産党の志位和夫委員長も「医療崩壊は菅政権による人災」と断じ、「改憲をどさくさ紛れで行うのは火事場泥棒だ」と語気を強めた。
 与党内にも慎重論がくすぶる。自民党中堅は「政権が有効な手を打っていないだけ。憲法の議論にすり替えたら国が危ない方向に行く」と懸念する。公明党幹部は「緊急事態条項とコロナ対応は別の話だ。急ぐ流れにはならない」と語った。 (C)時事通信社