英・University of OxfordのKazem Rahimi氏らは、ランダム化比較試験(RCT)48件のメタ解析の結果、血圧が正常の人や心臓発作、脳卒中の既往がない人でも収縮期血圧(SBP)が5mmHg下がると、主要心血管イベント(MACE)リスクが10%低下することが分かったとLancet2021; 397: 1625-1636)で報告した。今回の知見は、心血管リスクがある人では血圧に関係なく降圧薬の使用が選択肢となる可能性を示唆している。

心血管疾患既往の有無、SBP区分ごとに評価

 正常血圧や正常高値血圧の人における降圧薬治療の効果は、心血管疾患既往の有無にかかわらず明らかではない。Rahimi氏らは、1972~2013年に発表された降圧薬治療に関する主要RCT 48件について個人レベルデータのメタ解析を実施し、降圧薬治療の効果について検討した。

 対象試験は、①降圧薬とプラセボ②クラスの異なる降圧薬同士③降圧治療の強度-のいずれかを比較し、各群1,000人・年以上を追跡しており、①では降圧薬使用群、②では降圧効果が高かった群、③では治療強度の高い群を介入グループとし、もう一方を対照グループとした。心不全患者のみを登録した試験や、急性心筋梗塞(MI)などの急性期患者への短期介入試験は除外した。

 心血管疾患既往(ランダム化前の脳卒中、MI、虚血性心疾患)の有無によりデータを層別化し、全体および試験開始時のSBP区分(120mmHg未満~170mmHg以上を7区分)ごとに治療効果を評価した。

 主要評価項目はMACE(致死的/非致死的脳卒中、致死的/非致死的MI、虚血性心疾患、または心不全死・入院の複合評価)とし、intention-to-treat(ITT)解析を行った。

血圧レベルよりも心血管イベントリスクに焦点を当てるべき

 合計34万4,716例のデータを入手。ランダム化前の平均SBP/拡張期血圧(DBP)は、心血管疾患既往群(15万7,728例)が146/84mmHg、非既往群(18万6,988例)が157/89mmHgであった。試験開始時の血圧の分布は範囲が広く、SBP 130mmHg未満は、心血管疾患既往群が19.8%(3万1,239例)、非既往群が8.0%(1万4,928例)であった。

 降圧薬治療の相対効果はSBP低下度に比例していた。追跡期間の中央値は4.15年(四分位範囲2.97~4.96年)で、4万2,324例(12.3%)が1件以上のMACEを発症した。1,000人・年当たりのMACE発症率は、心血管疾患既往群における対照グループが39.7(95%CI 39.0~40.5)、介入グループが36.0(同35.3~36.7)で、非既往群における対照グループが31.9(同31.3~32.5)、介入グループが25.9(同25.4~26.4)であった。

 Cox比例ハザードモデルによる解析の結果、SBPが5mmHg低下するごとの介入グループの対照グループに対するMACEハザード比(HR)は、心血管疾患既往群で0.89(95%CI 0.86~0.92)、非既往群で0.91(同0.89~0.94)であった()。心血管疾患既往の有無、SBP区分による治療効果の差は認められなかった。

図. SBP 5mmHg低下当たりのMACE発症率

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(Lancet 2021; 397: 1625-1636)

 Rahimi氏らは「現行の医療では治療が考慮されない血圧レベルの患者でも、降圧薬による一定の降圧がMACEの初発・再発予防に効果的であることが示唆された」と指摘。「降圧治療に関する患者との話し合いでは、降圧効果自体に焦点を当てるよりも心血管イベントリスク低減における重要性を強調すべき」と付け加えている。

(小路浩史)