療養生活を続けていた中西宏明経団連会長(日立製作所会長)が退任し、後任に住友化学の十倉雅和会長が就任する人事が10日、決まった。新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた日本経済の成長戦略など難題が山積。十倉氏は「政経連携」を重視する姿勢だが、政治との距離感を保ちつつ、「財界総理」として経済界の主張を政策にどこまで反映できるのか手腕が問われる。
 後任の人選は、中西氏が辞任を申し出た4月中旬から本格化した。現役の経団連副会長や経験者が候補となり、最終的には中西氏が指名したという。十倉氏が製造業出身であることや、中西氏が進めたデジタル化路線を経団連副会長時代に支えたことが決め手になった。十倉氏は10日の記者会見で、「(中西氏の路線を)しっかりと踏襲していきたい」と継承する考えを強調した。
 経団連は2012年の第2次安倍政権発足以降、春闘で賃上げを促すなど政権と歩調を合わせてきた。十倉氏は米中対立の影響で経済安全保障への配慮が一段と必要になっていると指摘。その上で、「政経連携が大事だ。いい距離感を保ちながら従来通り取り組みたい」と抱負を語った。
 十倉氏は、コロナ感染拡大防止と経済回復の両立や、米中対立への対応のほか、国内企業の競争力を損なわない形での脱炭素社会への移行などで難しいかじ取りを迫られる。
 菅義偉首相は温室効果ガスを30年度までに13年度に比べて46%削減する目標を表明。野心的な目標に対しては鉄鋼や化学、エネルギーなど温室効果ガスを多く排出する企業の一部に反発や戸惑いがあり、経済界の足並みをそろえることが急務だ。
 一方、中西氏は経団連主導の就職・採用活動ルールの廃止や副会長への女性の起用など、硬直的な国内企業の人事制度改革に一定の成果を挙げた。ただ、人工知能(AI)といった先端技術を活用して社会課題を解決する「ソサエティー5.0」の実現などは道半ばに終わる。 (C)時事通信社