腎機能の低下に伴い認知症リスクが上昇することが分かった。スウェーデン・Karolinska InstituteのHong Xu氏らは、ストックホルム居住者約33万人を対象に腎機能と認知症リスクの関係を検討した結果をNeurology2021年5月5日オンライン版)に発表。認知症の10%が慢性腎臓病(CKD)に起因することが示唆されたという。

eGFR 30mL/分未満で認知症リスク1.6倍

 Xu氏らは、2006~11年に医療機関でクレアチニン検査を受けたストックホルム居住者32万9,822人のうち、腎代替療法(人工透析、腎移植)の実施歴がなく、認知症でない65歳以上を対象に、推算糸球体濾過量(eGFR)と認知症(新規に認知症と診断された者あるいは認知症治療を開始した者と定義)リスクの関係について検討した。また、観察初年度にeGFRを2回以上測定した20万5,622人を対象にeGFR低下率を推定し、その後の認知症リスクとの関連を検討した。

 中央値で5年間の追跡期間中に検出された認知症患者は1万8,983例(5.8%)。認知症発生率は16.0/1,000人・年。認知症の種類は、アルツハイマー型認知症が最も多く、次いで血管性認知症だった。

 腎機能と認知症発生率の関係を見ると、eGFR 90~104mL/分では認知症発生率が6.56/1,000人・年、eGFR 30mL/分未満では30.28/1,000人・年と、腎機能の低下に伴い認知症発生率が上昇した。多変量解析で年齢、性、併存症、薬剤などを調整した結果、認知症リスクはeGFR 90~104mL/分に対してeGFR 30~59mL/分では71%〔ハザード比(HR)1.71、95%CI 1.54~1.91〕、eGFR 30mL/分未満では162%(同2.62、1.91~3.58)上昇し、腎機能が低下するほど認知症リスクが上昇した。

 次に初年度にeGFRを2回以上測定した20万5,622人についてeGFRの変化と認知症リスクの関係を検討した。

 平均4.5年の追跡期間中に1万1,175例の認知症(アルツハイマー型認知症4,692例、血管性認知症2,495例など)が検出された。

 多変量解析の結果、腎機能の低下が急激なほど認知症リスクが高く、1年間のeGFR低下が2mL/分/1.73m2超と急速な場合に認知症リスクが有意に上昇した。eGFR低下と認知症リスク上昇の関係は血管性認知症でより強く、アルツハイマー型認知症で弱かった。

 併存症と認知症リスクの関係を多変量解析で検討した結果、CKD(eGFR 60mL/分未満)で最も認知症リスクが高く(HR 1.49、95%CI 1.23~1.80 、P<0.001)、次いでうつ病の既往(同1.49、1. 38~1. 62 、P<0.001)、脳卒中(同1.41、1. 35~1. 48 、P<0.001)、糖尿病(同1.22、1.16~1.27、P<0.001)、心房細動(同1.10、1.05~1.15、P<0.001)、心筋梗塞(同1.08、1.02~1.14、P=0.01)の順だった。高血圧(同0.95、0.92~0.99、P=0.01)、がんの既往(同0.87、0.84~0.90、P<0.001)は認知症リスクが低かった。うっ血性心不全と認知症リスクに関連は認められなかった。

心血管疾患や糖尿病よりリスク高い

 これら併存症の人口寄与危険割合(PAF)を解析した結果、PAFはeGFR 60mL/分未満で最も高く(10%、95%CI 6~14%)、次いでうつ病(同7%、5~8%)、脳卒中(同4%、3~4%)、糖尿病(同2%、2~3%)の順。心房細動(同1%、1~2%)、心筋梗塞(同0.6%、0.1~1%)はさらに低かった。

 以上から、Xu氏は「腎機能の低下と腎機能の急激な低下が認知症リスクを上昇させることが示唆された」と結論。さらに「認知症の10%がCKDに起因する可能性が示された。また認知症の危険因子である心血管疾患や糖尿病よりも、腎臓病の認知症リスクは高かった。この知見は、認知症の高リスク者における腎臓病スクリーニング法と腎機能モニタリング法の開発、実施に役立つ可能性がある。腎疾患患者を早期に診断、治療することで認知症リスクを低下させられるかもしれない」と述べている。

(大江 円)