菅義偉首相が看板政策に掲げたデジタル改革関連6法が成立した。デジタル庁の9月発足が確定し、秋までに行われる衆院選で政権の実績としてアピールしたい考え。ただ、足元では新型コロナウイルスのワクチン予約をめぐる混乱が広がっており、同庁は出だしから、ワクチン対応が急務になるとみられる。
 「今回の感染症で行政サービスや民間のデジタル化の遅れが浮き彫りになった。思い切ってデジタル化を進めなければ日本を変えることができない」。デジタル庁を「改革の象徴」と繰り返す首相は11日の参院内閣委員会でこう訴えた。
 デジタル化は、あらゆる行政手続きのオンライン化を進め、国民に便利さを実感してもらうのが狙い。平井卓也デジタル改革担当相は「スマホのみで行政手続きが60秒で完結できる環境につなげたい」と意欲を語る。
 ただ、ワクチン接種予約の現状をみると、首相らが描く理想からはほど遠い。高齢者向け接種では、政府や自治体がインターネット予約の利用を呼び掛けているものの、ネットに不慣れな人が多いとみられ、自治体のコールセンターに予約電話が殺到し、つながりにくい状況が続く。接種希望者が窓口に行列をつくる姿も連日報道されている。
 自治体のネット予約システムも、データ保管サービス提供元の米企業のシステム障害が影響し、12日朝から利用できない状況が各地で発生、混乱に拍車を掛けた。首相は7月末の高齢者接種完了を目指して1日100万回接種を目標に掲げる。夏以降に本格化する一般向け接種へ、デジタル庁が予約システムをどう立て直すかが問われそうだ。
 平井担当相は11日の記者会見で「予約システムは自治体がばらばらに取り組んでいる。デジタル庁自らシステムを開発し、全国共通で必要となる機能を提供するという可能性もある」と語った。
 デジタル化のカギを握るマイナンバーカードの普及も課題だ。国民への交付率はようやく3割に届いたが、ほぼ全国民が2022年度末までに取得するという政府目標の達成は見通せない。カードを健康保険証として利用できるようにする仕組みも試行運用で不具合があり、開始時期が今年3月から10月にずれ込んだ。
 個人情報保護への対応も問われる。自治体が持つ個人情報を匿名加工して民間に提供することが可能になる。データ活用を国や企業の競争力強化につなげる狙いだが、野党は目的外利用や情報漏えいの恐れを指摘している。 (C)時事通信社