米・University of PittsburghのSherry H.Y. Chou氏らは、同大学などが参加するGlobal Consortium Study of Neurologic Dysfunction in COVID-19(GCS-NeuroCOVID)と、欧州神経学協会(EAN)Neuro-COVID Registry(ENERGY)の2つの研究コンソーシアムが4大陸13カ国において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う神経障害に関する観察研究を実施。その結果、COVID-19入院患者では神経障害の発症率が高く、脳幹反射の異常、昏睡、急性脳症などが院内死亡リスクの上昇に関連していたとJAMA Netw Open2021;4: e2112131)に発表した。一方、患者が自覚症状として申告した頭痛や失神などの神経症状はリスク低下と関連していた。

患者の8割超に神経障害

 解析対象は①GCS-NeuroCOVIDの全てのCOVID-19入院患者コホート3,055例(平均年齢59.9歳、男性57%)②GCS-NeuroCOVIDの神経障害を有するCOVID-19入院患者に限定したコホート475例(同62.6歳、55%)③ENERGYの神経障害を有するCOVID-19入院患者に限定したコホート214例(同67歳、62%)ーの計3,744例。

 神経学的病態を、自覚症状として申告された神経症状と臨床診断による神経学的徴候・症候群に分類し、それぞれ院内死亡との関連を検討した。その結果、全体の82%がなんらかの神経障害(神経症状または神経学的徴候・症候群あるいは両方)を有していた。

 自覚症状として申告された神経症状のうち、発症率が最も高かったのは頭痛(37%)で、次いで嗅覚・味覚障害(26%)の順だった。失神も報告された。

 一方、臨床診断による神経学的徴候・症候群のうち、発症頻度が最も高かったのは急性脳症(49%)で、次いで昏睡(17%)、脳卒中(6%)の順だった。髄膜炎/脳炎はまれだった(0.5%)。

脳幹反射の異常、昏睡、急性脳症は院内死亡の高リスクに

 研究施設、年齢、性、人種/民族を調整後の解析では、臨床診断による神経学的徴候・症候群は院内死亡リスク上昇と関連していた〔調整後オッズ比(aOR)5.99、95%CI 4.33~8.28、P<0.001〕。院内死亡リスクが最も高い神経学的徴候・症候群は脳幹反射の異常(aOR 24.4、95%CI 7.06~83.5)、次いで昏睡(同7.70、5.65~10.5)、急性脳症(同5.51、4.01~7.57)の順だった(全てP<0.001)。

 Chou氏らは「重要な注意点として、今回の研究では神経障害の診断時期や持続期間は記録しておらず、これらと院内死亡との関連は検討していない。しかし、これらは特に重症患者において重要な項目であり、今後の研究で検討対象に含めるべき」との見解を示している。

重症例では頭痛や失神などの自覚症状は収集困難か

 一方、自覚症状として申告された神経症状は院内死亡リスクの低下と関連しており、調整後の解析でも頭痛(aOR 0.33、95%CI 0.24~0.44)および失神(同0.22、0.10~0.48)で院内死亡リスクの有意な低下が認められた(全てP<0.001)。

 この結果について、Chou氏らは診断基準バイアス(ascertainment bias)の可能性を指摘し、「重症COVID-19入院患者では、自覚症状のデータを十分に収集できなかった可能性がある」と考察している。

神経障害の既往歴はCOVID-19神経障害の危険因子に

 さらに、COVID-19に伴う神経学的徴候・症候群発症の危険因子を検討した結果、高齢(10歳上昇するごとのaOR 1.41、95%CI 1.34~1.48、P<0.001)、男性(aOR 1.53、95%CI 1.30~1.82、P<0.001)、神経障害の既往歴(同2.23、1.80~2.75、P<0.001)、白人(例えば白人に対するアジア人:aOR 0.62、95%CI 0.41~0.94、P=0.02)が抽出された。

 ただし、神経障害の既往歴による発症リスク上昇について、Chou氏らは「今回の研究デザインでは、既存の神経疾患の増悪、新規発症の神経学的症候群、全身性疾患の神経学的合併症が混在していた可能性がある」と指摘している。

(太田敦子)