新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急事態宣言は、新たに北海道と岡山、広島両県に発令されることになった。政府は当初、まん延防止等重点措置にとどめる方針だったが、14日の専門家の意見を踏まえ、急きょ踏み込んだ。私権制限を伴う政府方針が決定直前に覆るのは前代未聞だ。政権内には、その迷走ぶりに「国民の信頼を失う」と危機感が広がっている。
 3度目の緊急事態宣言に当たり、政府は「短すぎる」との専門家の意見をよそに、期限を5月11日までと設定したが、結局、延長に追い込まれた。今回も新たな宣言は見送る方針を菅義偉首相が関係閣僚と確認していたが、事態を憂慮する専門家に覆された。政府の想定が感染の深刻な現状に追い付いていない。
 政府はこれまで、感染症の専門家らの意見を採り入れつつ、経済への負の影響も考慮して対策を総合的に判断してきた。感染拡大を抑え込むには人の動きを止めたいが、経済への打撃も回避したい。相矛盾する要求をできるだけ満たさなければならない難しさが、対策に付きまとってきた。
 首相の従来の対応が「後手」「小出し」などと批判されてきたのも、経済への配慮があればこそだ。そのさじ加減に正解があるとは言えないが、政治判断の結果責任は問われている。5月に入り、感染悪化に連動するように内閣支持率が下落しており、感染抑制により重心を移さざるを得ないと判断したのだろう。
 首相は周囲の進言もあり、発信に時間を割くようになったが、その姿勢には「分かってもらいたい」という熱意が依然感じられない。自粛疲れした人々にどう訴えたら協力してもらえるのか。言葉を尽くして納得を得る役割を果たせるのは、首相をおいて他にいない。 (C)時事通信社