9都道府県を対象とした新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言は、期限の今月末に解除できるかが焦点となる。宣言解除には感染状況をステージ3(感染急増)に引き下げるのが最低条件だが、感染症専門家は「これまでより高いハードルを設けるべきだ」との意見を強めている。
 「すぐに解除の誘惑に駆られる。そこを我慢することが次の光につながる」。基本的対処方針分科会の尾身茂会長は14日の記者会見で、リバウンド(感染再拡大)を起こさない程度まで感染状況を抑えることが宣言解除の要件になるとの考えを示した。
 14日の分科会では、専門家が政府案に「反旗を翻し」(分科会関係者)、北海道、岡山、広島3道県の宣言追加を決めた。尾身氏の指摘は、経済活動を重視し感染対策を小出しにしがちな政府にくぎを刺したものだ。
 専門家が危機感を強めているのは、変異ウイルスが予想を上回るスピードで国内に定着しているためだ。国立感染症研究所は全国で新型コロナウイルスの9割以上が変異株に置き換わったと推計。感染力だけでなく重症化リスクも高いとみられ、「全く新しいウイルス」との指摘もある。
 2月末で宣言を前倒し解除した大阪府などでは、入院待ちの感染者が死亡するなど「医療崩壊」が現実のものとなりつつある。政府関係者によると、厳しい対応を取るよう「現場の臨床医から分科会の専門家が突き上げられている」という。分科会メンバーは、現在の宣言期限となる5月末の解除について「厳格に判断しなければならない」と強調する。
 ◇専門家主導権も
 3道県の宣言追加をめぐり、強い措置を求める専門家の意見を政府が受け入れたことで、解除の際も専門家の判断を重視せざるを得なくなる可能性がある。尾身氏は先に感染指標のステージ2(感染漸増)相当で宣言を解除するのが望ましいとの認識を示したが、現状では5月末までに実現するのは困難とみる向きが多い。
 感染状況が落ち着かず宣言が再延長されれば、7月23日開幕の東京五輪中止論がさらに高まりかねない。「5月末で東京、大阪だけでも宣言解除につなげたい」(省庁幹部)のが政府の本音だ。
 政府が切り札と期待するワクチン接種の進展にもなお時間がかかりそうで、変異ウイルスを前に有効な対策が見当たらないのが実情。内閣官房幹部は、飲食店対策を強化し「ちゅうちょせず命令、罰則の手続きを取る時期に来ている」と話す。 (C)時事通信社