横浜市立大学、国立がん研究センターなどの研究グループは、日本ゲノム疫学研究コンソーシアム(Japanese Consortium of Genetic Epidemiology studies;J-CGE)を構築し、ゲノム情報を用いたメンデルランダム化解析により、BMIと大腸がんリスクとの関連をアジア人で検討した結果をCancer Sci (2021; 112: 1579-1588)に発表。遺伝的に予測されるBMIが1単位増加するごとに、大腸がんリスクは7%上昇することが示されたと報告した。

喫煙や飲酒は「確実な」危険因子の一方で、肥満は「ほぼ確実な」危険因子

 大腸がんは年間の新規発症者数が約15万人とわが国で最も多いがんで、危険因子として喫煙や飲酒、肥満が挙げられる。国立がん研究センターが行った科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究では、喫煙や飲酒が「確実な」危険因子である一方、肥満は「ほぼ確実な」危険因子と判定されている。

 研究グループは、肥満が確実な危険因子でない要因として、従来の観察研究ではBMIが高い位の集団と平均的な集団において喫煙や飲酒などの背景因子の均等化が困難であり、BMIと大腸がんリスクの間に因果関係の有無を明確に示せなかった点を挙げている。このような交絡への対処法として期待されるのがメンデルランダム化解析で、ゲノム情報から予測した形質と疾病リスクとの関連が推計できる。

 そこで研究グループは今回、遺伝子多型がランダムに分配され、背景因子の均等化になることが期待できるメンデルの法則を用いてランダム化解析を行い、BMI実測値ではなく、ゲノム情報でBMIを予測し、遺伝的に予測されるBMI値と大腸がんリスクとの関連を検討した。

SNP-BMIとSNP-大腸がんリスクが比例

 研究グループは、まずメンデルランダム化解析で用いるBMIに関係する一塩基多型(SNP)として、①日本人で関係が報告されている68個のSNP型セット②世界中で報告されているSNPの情報を集めたデータベースであるゲノムワイド関連解析研究(GWAS)カタログから網羅的に同定した 654個のSNPのセット―を作成した。日本人のBMIのばらつきについて、①は約2.0%、②は約5.0%を説明できると推計された。

 これらのSNPセットについて、日本人一般集団約3万6,000人でBMIとの関連を、大腸がん患者約7,500例と対照3万7,000例において大腸がんとの関連をそれぞれ分析した。SNPのセットとBMIの関連は各コホートで分析、両者を統合して算出した。解析の結果、SNP-BMI の関連が強まるにつれ、SNP-大腸がんの関連が強まっていた()。メンデルランダム化解析により、ゲノム情報から予測されるBMIの1単位(kg/m2)増加当たりのオッズ比(OR)を算出したところ、①68個のSNPのセットを用いた解析では1.13(95%CI 1.06~1.20)、②654個のSNPセットを用いた解析では1.07(同1.03~1.11)とであった()。

図. メンデルランダム化解析の結果 

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(横浜市立大学プレスリリースより引用)

 研究の限界として、研究グループは「メンデルランダム化解析により妥当な結果を得るためには、①SNPが形質と関連している②SNPが形質を介してのみがんの発生に影響する③SNPとがんの発生との間に交絡因子が存在しない―の3つの前提条件を満たす必要があるが、これを証明することはできないため、結果を因果関係と解釈できない可能性がある」と指摘。また、「メンデルランダム化解析では、遺伝的に予測されるBMIと大腸がんリスクとの関連を評価している。通常、BMIは遺伝要因と環境要因によって決まり、後者(食行動や身体活動量など)の影響により生涯を通して変動するが、研究に用いたゲノム情報から予測したBMI値は、生涯の平均的なBMIを反映しているといえるかもしれない。そのため、今回の結果は、ある時点で測定したBMIと大腸がんリスクとの関係を見る研究結果よりも、ORを過大評価している可能性がある」と考察している。

 その上で、「従来の観察研究と比べ、交絡の影響を受けにくいメンデルランダム化解析においても、BMIと大腸がんリスクとの関連が示されたことは、大腸がんの予防法を検討する際に役立つエビデンスである」とまとめている。

 (編集部