安価で耐熱性などに優れる天然の繊維状鉱物アスベスト(石綿)。国内では戦後の高度経済成長期に大量輸入され、約8割が建材に使用された。しかし、重篤な健康被害を引き起こすことが明らかになり、現在は製造・使用が全面禁止されている。発症までの潜伏期間が長く、命に関わるケースも多いことから「静かな時限爆弾」と呼ばれる。
 石綿は1890年ごろから輸入が開始され、戦後は建物の不燃化が進められる中、防火材として注目された。1964年には、吹き付け石綿や石綿を使用した板、断熱材が政令で耐火構造用建材に指定され、輸入量は74年に約35万トンとピークに達した。
 一方、石綿肺の危険性は戦前から認識され、60年のじん肺法で補償対象となった。労働省(当時)は71年、「粉じんを大量吸入すると、肺がんを発生することがある」として事業者に職場環境の改善を求める通達を出し、防じんマスクの備え付け義務化などを盛り込んだ特定化学物質障害予防規則(特化則)を制定。国際労働機関なども72年に石綿の発がん性を指摘した。
 75年の改正特化則では、石綿の吹き付け作業を原則禁止し、事業者に代替化の努力義務を課した。2004年には石綿含有建材の製造禁止が決まり、耐火構造用指定建材からも削除された。
 05年には、兵庫県尼崎市で大手機械メーカー「クボタ」の工場の周辺住民が中皮腫になっていたことが判明し、大きな問題となった。06年には、労災対象外の被害者の救済を盛り込んだ石綿救済法が施行され、石綿の使用・製造も全面禁止された。 (C)時事通信社