国立感染症研究所感染症疫学センターは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンのトジナメラン接種者におけるSARS-CoV-2感染率に関し国内のサーベイランスデータを用いて調査した。その結果、ワクチンを少なくとも1回接種済みの医療従事者110万1,698例(うち2回接種済み104万2,998例)中SARS-CoV-2陽性と報告されたのは281例(0.026%)(4月30日時点)、1回目接種後14日以降の感染を約60%抑制する効果が得られたとし、イスラエルのリアルワールドデータと同等の可能性があると報告した(関連記事「イスラエル・コロナ集団接種94%の有効性」)。

ワクチンを接種した医療従事者を対象に仮想コホートを構成

 同センターは今回、ワクチン接種円滑化システム(V-SYS)と新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)のデータを分析。V-SYSは、ワクチンの在庫や発注量、接種実績を一元管理する情報システムであり、予防接種実施医療機関に分配されたワクチンの接種実績(接種日、接種回数)が記録されている。HER-SYSは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の発生届け出システムであり、COVID-19患者を診断した医師は、発生届にワクチンの接種歴(ワクチンの種類、接種日など)を記録することが義務付けられている。

 V-SYSのデータからワクチン接種を受けた医療従事者の仮想コホートを構築し、HER-SYSから抽出したワクチン接種歴が記録されたCOVID-19患者データと照合した。

 対象は、2021年2月17日~一般の高齢者への接種が開始される直前の4月11日にワクチンを少なくとも1回接種した医療従事者とし、主評価項目はCOVID-19の診断日、副次評価項目は診断日におけるCOVID-19症状の有無とした。追跡期間は、1回目のワクチン接種日から診断日まで、または2021年4月30日(HER-SYSデータ取得日)までとした。

1回目のワクチン接種後12日前後を境にSARS-CoV-2感染率が低下傾向

 解析の結果、ワクチンを1回接種した医療従事者は110万1,698例〔4月30日時点で2回接種を完了したのは104万2,998例(94.7%)〕だった。110万1,698例中281例がCOVID-19と診断された(1例はワクチン接種前に診断されていたため除外)。このうち、1回目接種後28日以内に診断されたのは256例(91.1%)で、女性と20~40歳代が約7割を占めていた。

 また、2回目接種後に診断されたのは47例(16.7%)、このうち無症状例は40.4%で、1回目接種後における無症状例の割合(20.1%)より高い傾向にあった(1

1. トジナメラン接種後にCOVID-19と診断された症例

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 Kaplan-Meier法による解析を行ったところ、1回目のワクチン接種日から12日前後を境にCOVID-19診断例が減少する傾向が見られた()。

. トジナメラン接種後におけるCOVID-19診断例のKaplan-Meier曲線

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 ワクチン接種後の経過日数別に見たCOVID-19報告率は、0~13日が1.26/10万人・日、14~20日が0.53/10万人・日、21~27日が0.49/10万人・日、28日以降が0.18/10万人・日だった。

 接種後0~13日に対するCOVID-19報告率比は、14~20日が0.42(95%CI 0.30~0.59)、21~27日が0.39(同0.27~0.56)、28日以降が0.14(同0.09~0.21)だった(2)。

2. トジナメラン接種後のCOVID-19報告率と報告率比

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〔表1、2、図とも国立感染症研究所 感染症疫学センター「新型コロナワクチン BNT162b2(Pfizer/BioNTech)を接種後のCOVID-19報告率に関する検討(第1報)」〕

 有症状例に比べ、無症状例の報告率は全期間で低かった。また、報告率の経時的な低下幅は、有症状例に比べて無症状例で小さかった。

2回目接種後のデータ蓄積が待たれる

 同センターの調査では、ワクチン非接種者におけるCOVID-19報告率の情報がなく、トジナメランのSARS-CoV-2感染抑制効果を直接的に推定することはできない。しかし、1回目接種から臨床的効果が見られるまでに12日前後を要するという先行研究に今回の結果を当てはめると、ワクチン接種後14日以降にSARS-CoV-2感染率が約60%抑制されたことに相当すると同センターは考察。イスラエルの先行研究では、1回目接種から2回目接種までにおける感染抑制効果は46~60%だったと報告されており、今回の結果はそれと同等である可能性があるという。

 今回の調査では、ワクチン接種者の基本特性情報がなく、年齢や性、基礎疾患の交絡因子を補正していない。ただし、SARS-CoV-2感染者は医療従事者一般の男女別年齢分布を反映し、20~40歳代および女性が大部分を占めていたことから、比較的特性のばらつきが少ない集団と考えられるとしている。

 同センターでは「2回目接種後のSARS-CoV-2感染率については、今後のデータの蓄積を待ち、検討する必要がある」と述べている。

(渕本 稔)