出生時に告げられた性別と性自認が異なるトランスジェンダーおよびジェンダー・ダイバース(transgender and gender diverse ; TGD)の人たちは、精神的な健康問題を抱えるリスクが高い。こうした中、米・Harvard Medical SchoolのAnthony N. Almazan氏らは、TGDの人たちを対象に性別適合手術と術後の精神的健康アウトカムとの関連について検討する過去最大規模の研究を実施。性別適合手術を受けた人たちでは、心理的苦痛や自殺傾向などの精神的健康アウトカムの改善が認められたとする結果をJAMA Surg2021年4月28日オンライン版)に発表した。

米国では成人TGDの25%が手術経験

 TGDの人たちは精神的な健康問題に苦しむ頻度が高く、生涯に1回以上の自殺企図の経験がある人の割合は41%に上るとの報告もある。

 一方、世界トランスジェンダー・ヘルス専門家協会(WPATH)が発行するStandards of Careでは、性別適合手術が多くのTGDの人たちの心理的苦痛を軽減するための医学的に必要な治療法として位置付けられている。また、米国50州のTGDの成人を対象とした大規模調査(2015 US Transgender Survey;USTS)では、回答者の25%がなんらかの形で性別適合手術を受けていることが明らかにされている。

 性別適合手術を望むTGDの人たちは増加傾向にあるが、性別適合手術がTGDの人たちの精神的な健康状態を改善することを裏付ける質の高いエビデンスはなかった。そこでAlmazan氏らは今回、性別適合手術と心理的苦痛や物質使用、自殺傾向などの精神的健康アウトカムとの関連について検討するため、2015 USTSの調査データを用いた二次解析を実施した。

心理的苦痛や自殺企図のリスクは約4割低下

 対象は、2015 USTSに参加したTGDの成人2万7,715人。18~44歳が81.1%を占めており、白人の割合は82.1%だった。また、トランスジェンダー女性と自認していた人の割合は38.8%、トランスジェンダー男性と自認していた人の割合は32.5%、ノンバイナリー(性自認が男性と女性のいずれでもない)の人の割合は26.6%だった。

 対象者のうち3,559人(12.8%)は、調査に回答する前の少なくとも2年間に1種類以上の性別適合手術を受けた経験があることを是認していた。また、1万6,401人(59.2%)は性別適合手術を受けたいという希望を持っていたが、実際に手術を受けた経験はなかった。

 社会人口学的因子と手術以外の性別適合治療で調整して解析した結果、1種類以上の性別適合手術を受けた経験は、過去1カ月間の心理的苦痛リスクの低下〔調整後オッズ比(aOR)0.58、95%CI 0.50~0.67、P<0.001〕および過去1年間の喫煙リスクの低下(同0.65、0.57~0.75、P<0.001)、過去1年間の自殺企図リスクの低下(同0.56、0.50~0.64、P<0.001)と関連していた。

 以上を踏まえ、Almazan氏らは「この研究では性別適合手術と精神的健康アウトカムの改善に関連が認められた。この結果は、性別適合手術を望むTGDの人たちに対する同手術の施行を支持する経験的エビデンスとなるものだ」と述べている。

岬りり子