新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンは、ファイザー製(トジナメラン)、モデルナ製(mRNA-1273)いずれも2回接種が標準接種法とされており、世界的なワクチン接種率向上の足かせとなっている。米・Mayo ClinicのSantiago Romero-Brufau氏らは、エージェントベース・モデルとして米国の人口集団10万人を想定したシミュレーションの結果、ワクチン接種率が1日当たり人口の0.3%以下である場合、2回目の接種を遅らせてより若い世代への1回目の接種を優先させることで、180日後までの累積死亡率が最大20%低下する可能性が示されたとBMJ2021; 373: n1087)に発表した(関連記事「トジナメラン、2回接種の有効性95%超」「コロナワクチン1回接種で入院率9割減少」)。

コロナワクチン低接種率打開策は?

 トジナメランおよびmRNA-1273は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の症候性感染およびCOVID-19の死亡抑制に優れた効果を示す。しかし、世界的なワクチン接種率は依然低く、COVID-19の疾病負担が大きい。世界人口への効果的なワクチン接種に時間がかかるほど、ワクチン耐性株の発生が懸念される。こうした中、米疾病対策センター(CDC)は、トジナメランとmRNA-1273の1回接種によるSARS-CoV-2の感染予防効果は80%との推定を示し、1回接種でも集団免疫が向上し、死亡率を抑制する効果が示唆されていた。

 Romero-Brufau氏らは、エージェントベース・モデリングを用いて米国人口10万人の感染モデルを構築し、mRNAワクチン(トジナメランまたはmRNA-1273)の接種戦略について、2回目遅延接種(1回目の接種は高齢者から開始)におけるワクチン1回接種180日後までのSARS-CoV-2累積感染率、COVID-19による累積死亡率に及ぼす影響をシミュレーションによって標準接種法と比較した。

 シミュレーションは10回実施し、結果を平均値で示した。感度分析で複数の異なるシナリオを検討し、2回目遅延接種におけるワクチン1回接種後12~180日の有効率を5種類(50%、60%、70%、80%、90%)、ワクチン接種率を3種類(1日当たり人口の0.1%、0.3%、1%)設定した。

1日当たり人口の0.3%以下の接種率で有益

 シミュレーションの結果、1日当たりのワクチン接種率が人口の0.3%では、標準接種法と2回目遅延接種における1回接種後の累積死亡率(10万人対)中央値は、1回接種の有効率が90%、80%、70%で、それぞれ226 vs. 179、233 vs. 207、235 vs. 236だった。2回目遅延接種戦略は、1回接種の有効性が80%以上で、1日当たりのワクチン接種率が人口の0.3%以下の場合に最適となり、絶対累積死亡率の低下(10万人対26~47)をもたらした()。

図. 標準接種法と2回目遅延接種における1回接種後の累積死亡率(1回接種の有効率別)

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BMJ 2021; 373: n1087

 また、2回目遅延接種の対象から65歳以上を除外したシミュレーションでは、1回接種の有効率を80%とした場合、2回目遅延接種、標準接種法、65歳以上を除く2回目遅延接種の累積死亡率(10万対)は、ワクチン接種率が1日当たり人口の0.1%でそれぞれ402 vs. 442 vs. 394、0.3%で204 vs. 241 vs. 222、1%で86 vs. 50 vs. 55となり、1%以下の場合にほぼ最適になることが示唆された。

ワクチン接種率向上とリスク検討を

 以上の結果から、Romero-Brufau氏らは「少なくとも65歳未満の人々にとって、2回目のワクチン接種を遅らせる戦略は、特定の条件下で累積死亡率を低下させる可能性がある」と結論づけている。

 同氏は「ほとんどの国がワクチン接種率を上げる方法を模索している。トジナメランまたはmRNA-1273の2回目の接種を遅らせることは、ワクチンの入手可能性の拡大や物流管理の負担軽減とともに、特定の条件下では死亡を防ぐための最適な戦略でもある可能性が示された。政策決定者は地域のワクチン接種率を検討し、2回目の遅延接種によりワクチン接種率を上げる利点と、この戦略の不確実性に関連するリスクを比較検討する必要がある」と述べている。

(坂田真子)