国の新型コロナウイルスワクチン大規模接種をめぐり、架空情報を入力して予約システムの不備を指摘した朝日新聞出版と毎日新聞社に防衛省が抗議した。岸信夫防衛相は「65歳以上の接種機会を奪う極めて悪質な行為」と両社を批判するが、「『穴を見つけていただいてありがとうございます』ではないのか」(立憲民主党の安住淳国対委員長)と取材の公益性を指摘する声もある。専門家はどうみるか。
 元警視庁刑事の沢井康生弁護士は架空情報での予約について「ワクチンを廃棄せざるを得ないほど業務を混乱させたならば偽計業務妨害罪が成立する」と指摘する。ただ、今回のケースは愉快犯などではなく、報道機関による取材の一環であり、「業務妨害の程度は低い」として、立件への壁は高いとの見方を示した。
 元北海道新聞記者で、警察の裏金問題などを追及してきた東京都市大の高田昌幸教授(ジャーナリズム)は「国は取材過程の是非を判断する立場にはない」と防衛省を批判。取材の詳細は明らかにされていないが、「架空予約が数件で、すぐに消去したのであれば、業務の妨害ではなく事実確認の行為と捉えられるのではないか」と話し、システムの不備を報じたことの公益性を指摘した。
 田島泰彦・元上智大教授(メディア法)も両社の取材手法は容認できるとの立場だ。「タイミングを見て率先して問題を示すのが報道機関の役割。改善のきっかけとなる報道だった」と評価。「最終的な利益は接種する市民の命。指摘を受けて『どう改善するか』と努力するのが適切で、(メディアへの)抗議は筋が違う」と語った。 (C)時事通信社