日本臨床腫瘍学会は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)蔓延下におけるわが国のがん診療、特にがん薬物療法の実態を調査し、今後のパンデミック時に想定されるがん診療のクリニカルクエスチョンを解決することを目的に同学会の会員に対してアンケートを実施。結果を公式サイトで公開した。

第一波では半数ががん薬物療法の変更なし

 調査はオンラインのアンケートツールを用いて無記名式で実施、994人から回答を得た。内訳は男性が71.3%、女性が28.7%で、年齢は41〜50歳が41.1%、51〜60歳が28.6%、31〜40歳が21.3%、職種は医師が77.8%、薬剤師が12.4%、看護師が8.1%、専門領域は内科が77.8%、外科が14.6%だった。

 所属施設は大学が36.5%、国公立病院が24.8%、私立病院が19.0%、がんセンターが13.3%で、病床数は500〜999床が54.8%と半数超を占め、350〜499床が20.2%、1,000床以上が10.6%だった。

 所属先のCOVID-19患者(疑い例含む)の受け入れ状況については図1の通りで、9割近くが受け入れていた。受け入れ施設では88.2%がCOVID-19専用病棟を設置したが、12.0%は特別な態勢を取らず通常診療で対応していた。手術件数の制限は33.8%、化学療法の件数や内容の制限は8.5%の施設で行われていた。患者数は「少し減った」が46.0%で最も多かったが、「変わらなかった」との回答も40.4%に上った。

図1. 所属先におけるCOVID-19患者(疑い例含む)の受け入れ状況

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 第一波時におけるがん薬物療法の変化については図2の通りで、半数以上が治療に変化はなく、多少の変化が41.3%で、大きく変わったのは4.0%にすぎなかった。

図2. 第一波時におけるがん薬物療法の変化

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 具体的な変化としては「投与間隔・期間の延⻑あるいはスキップ(32.7%)」、「投与間隔が長いレジメンへの変更(22.1%)」、「骨髄抑制が少ないレジメンへの変更(15.3%)」、「緩和・姑息的治療の変更(12.2%)」、「進行がんにおける注射薬レジメンから内服薬レジメンへの変更(10.4%)」、「寛解状態にある患者の維持療法の中断(10.3%)」、「補助療法における注射薬レジメンから内服薬レジメンへの変更(9.3%)」などで、「殺細胞性抗がん薬の変更(11.6%)」、「免疫チェックポイント阻害薬の変更(4.5%)」、「分子標的治療薬の変更(3.8%)」なども見られた。いずれも該当する患者全例ではなく、「ごくわずか」または「少数例」に対して実施されていた。

 高齢者、糖尿病、循環器疾患など、COVID-19重症化危険因子を有する患者におけるがん薬物療法については、「変更しなかった」との回答が63.7%を占め、「少し変更した」「ごくわずか変更した」がそれぞれ18.3%、17.7%と続き、半数以上は変更しなかった実態が示された。

 がん薬物療法を施行中の患者からのCOVID-19を意識した治療に関する要望・問い合わせについては「少しあった」が53.9%、「かなりあった」が19.0%で、「ほとんどなかった」は19.3%、「全くなかった」は8.2%だった。

第二波でもがん薬物療法の変更なしまたは第一波と変わらずが大多数

 第二波時のがん薬物療法の変化については図3の通りで、やはりCOVID-19蔓延前と変わらない、もしくは第一波と同様という回答が目立った。中間の対応については自由記載でさまざまな実例が寄せられているが、新型コロナウイルス感染対策を行いながら通常通りの治療を実施するとの回答が目立った。

図3. 第二波時におけるがん薬物療法の変化

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 なお、COVID-19とがん診療に関する指針の認知度は、日本癌治療学会、日本癌学会、日本臨床腫瘍学会の3学会合同の「医療従事者向けQ&A」が77.2%、3学会合同の「がん患者さん向けQ&A」が59.1%、米国臨床腫瘍学会(ASCO)や欧州臨床腫瘍学会(ESMO)など海外学会の指針が64.5%だった。指針を参考にした薬物療法の変更の実施についてはそれぞれ49.7%、33.7%、35.1%と、「医療従事者向けQ&A」が最も頻度が高かった。

 アンケートの自由記載欄には学会員から率直な意見が寄せられており、地域や施設、診療科によりCOVID-19に対して多種多様な対応・考え方があることがうかがわれた。

(安部重範)