生死に関わるような危険な体験など、極めて強い心的な衝撃を受けたことにより発症する心的外傷後ストレス障害(PTSD)。高血圧や排尿障害の治療に用いられるプラゾシンがPTSD治療にも使われる国があることから、ブラジル・University of Sao PauloのHenrique Soares Paiva氏らはシステマチックレビューにより有効性を検討し、結果をPsychiatry Investig2021年5月14日オンライン版)に報告した。

RCT 7件を含む47件をレビュー

 一般にPTSDでは非薬物療法として精神療法が行われ、抑うつや不安、不眠などの症状には対症療法として抗うつ薬や抗不安薬などが使われる。海外ではPTSDに伴う睡眠障害および悪夢障害などに対して、α1遮断薬プラゾシンが処方されるケースが報告されていることから、Paiva氏らはPTSD治療におけるプラゾシンの有効性を検討するため、システマチックレビューを行った。

 PubMed、EMBASE、OVID、Cochrane Libraryから抽出した168件のうち条件を満たした85件について質的統合を行い、47件をレビュー対象とした。ランダム化比較試験(RCT)は7件含まれ、うち2件はプラゾシンの有効性が示されず、残る5件は有効性が示唆されていた。

PTSD治療に有効、安価で費用効率も優れた薬剤

 システマチックレビューの結果、ほぼ全ての試験で主として不眠症状(悪夢や夜間徘徊)に対する有効性が確認された。大規模なものを幾つか例に挙げると、①プラセボ群と比べプラゾシン群で睡眠の質およびPTSD症状が総合的に改善していたメタ解析(240例)②プラセボ、ヒドロキシジン、プラゾシンの3剤の比較においてプラゾシン群で悪夢の減少や睡眠の質の向上が確認されたRCTがある。

 一方、プラゾシンの有効性が認められなかったものとして、304例に対し26週にわたり介入したRCTはプラセボ群とプラゾシン群で有意な改善が示されなかった結果についてPaiva氏らは「臨床的に症状が安定しているPTSD患者を登録したことによる選択バイアスによるものではないか」との見解を示している。

 プラゾシンはPTSD患者に見られる過覚醒症状に対し、α1受容体においてノルアドレナリンに拮抗し、アドレナリン作動性神経の影響を遮断するとされる。Paiva氏らは「プラゾシンの特性を生かした処方により、PTSD症状に対する有効性がより明確になる可能性がある」と考察。その上で、「プラゾシンはPTSD治療に有効であることが示唆され、安価で費用効果に優れた薬剤として他の治療薬に引けを取らない」と結論し、「より多くの多施設共同RCTによるデータをメタ解析する必要がある」とまとめている。

松浦庸夫