世界貿易機関(WTO)が新事務局長の下で態勢立て直しへ動きだしたのに合わせ、日本政府がWTO内での影響力拡大に乗り出した。5月、事務局トップを直接補佐する中枢ポストに外務省出身の幹部職員を初めて派遣。新型コロナウイルスの感染拡大で各国の利害が食い違うワクチンなど医療物資の輸出規制をはじめ、貿易ルール作りで主導権を握りたい考えだ。
 WTOをめぐっては、アゼベド前事務局長が昨夏に任期途中で辞任。すぐに後任選びが始まったが、自由貿易に消極的な当時の米トランプ政権の横やりでしばらく空席が続いた。国際協調を重視する米バイデン政権が発足して潮目が変わり、ナイジェリア出身のオコンジョイウェアラ氏が今年3月に就任した。
 これに合わせ、日本政府は内閣官房で環太平洋連携協定(TPP)を担当し、経済外交に精通した外務省出身の宇山智哉氏をWTO事務局長の最側近、上級補佐官として送り込んだ。宇山氏は取材に対し、「WTO改革に本気で取り組もうとしている事務局長をそばで、全力で支えたい」と意気込みを示した。関係者も「改革志向の事務局長の下で、WTO改革は上げ潮に乗っている」と話し、WTOが抱える懸案の解決に弾みがつくと期待する。
 日本としては、コロナ禍で医療物資の輸出を規制する保護主義的な動きが一部の国や地域で見られたことから、これに歯止めをかける一定のルール化を求める考えだ。また、電子商取引などデジタル経済に対応した国際的なルール作りでも進展を目指す。まずは、11~12月にスイス・ジュネーブで開かれる新体制下で初めての閣僚会議が試金石となる。 (C)時事通信社