抗腫瘍壊死因子(TNFα)抗体製剤インフリキシマブを使用中の炎症性腸疾患(IBD)患者では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの初回接種後の抗体反応が減弱していたとする大規模研究の結果が明らかになった。英・Royal Devon and Exeter NHS Foundation TrustのNicholas A.Kennedy氏らがGut2021年4月26日オンライン版)に発表した。

抗体医薬ベドリズマブ使用患者と比較

 英国をはじめワクチンの供給量が不十分な地域では、できるだけ多くの人にワクチンを接種するため、2回目の接種を遅らせる措置が取られている。しかし、それと引き換えに多くの高リスク者で十分な防御免疫が獲得できていない状況が生じている。

 また、化学療法を受けているがん患者や代謝拮抗薬による免疫抑制療法を受けている臓器移植後の患者では、SARS-CoV-2に対する抗体が産生されにくいことが報告されている。しかし、SARS-CoV-2ワクチン接種後に抗TNFα抗体製剤が免疫原性に与える影響について調べた研究の報告はなかった。

 そこで、Kennedy氏らは今回、2020年9~12月に英国92施設でCLARITY studyに登録されたクローン病および潰瘍性大腸炎の患者のうち、インフリキシマブを使用中の865例(インフリキシマブ群)と、抗α4β7インテグリン抗体製剤ベドリズマブを使用中の428例(ベドリズマブ群)を対象に、これらの薬剤がSARS-CoV-2ワクチン初回接種後の血清学的反応に与える影響について比較検討した。

 主要評価項目は、1回目のSARS-CoV-2ワクチン(ファイザー製またはアストラゼネカ製)の接種から3~10週後に測定したSARS-CoV-2スパイク蛋白質に結合する抗体価、副次評価項目はセロコンバージョン率などであった。

初回接種後の抗体価はインフリキシマブ群で低い

 検討の結果、ファイザー製またはアストラゼネカ製ワクチン接種後の抗SARS-CoV-2抗体価の幾何平均値(SD)は、ベドリズマブ群と比べてインフリキシマブ群で低かった〔ファイザー製ワクチン接種後:28.8(5.4)U/mL vs. 6.0 (5.9)U/mL、P<0.0001、アストラゼネカ製ワクチン接種後:13.8 (5.9)U/mL vs. 4.7(4.9) U/mL、P<0.0001〕。

 また、多変量モデルを用いた解析でも、いずれのワクチンについても初回接種後の抗体価はベドリズマブ群と比べてインフリキシマブ群で低いことが示された〔ファイザー製ワクチン接種後:倍率変化(FC)0.29、95%CI 0.21~0.40、P<0.0001、アストラゼネカ製ワクチン接種後:FC0.39、95%CI0.30~0.51、P<0.0001〕。

抗体価の低下は、高齢、免疫調整薬の使用、クローン病、喫煙と関連

 また、高齢(60歳以上)、免疫調整薬の使用、クローン病、喫煙は抗SARS-CoV-2抗体価の低下に関連していた一方、白人以外の民族は抗SARS-CoV-2抗体価の上昇と関連していた。いずれのワクチンについても、接種後のセロコンバージョン率は過去にSARS-CoV-2感染歴がある患者、およびファイザー製ワクチンを2回接種した患者で高いことも示された。

 以上を踏まえ、Kennedy氏らは「インフリキシマブを使用中の患者に対しては、SARS-CoV-2ワクチンの2回目の接種を遅らせるべきではない」と主張している。

(岬りり子)