【トレド=米オハイオ州=時事】米国で新型コロナウイルスワクチンの接種ペースが鈍化する中、ワクチンを必要な地域に持って行く取り組みが活発化している。住民の集団免疫達成を目指し、接種率が低い地域を中心に戸別訪問や、バスの車内で接種を受けられる「ワクチンバス」の派遣などを行っている中西部オハイオ州トレド(人口約27万人)の取り組みを取材した。
 「きょう家に帰る途中に(バスの)『無料ワクチン』『予約不要』のサインを見掛けて受けに来た」。トレドの住宅街に停車していたワクチンバスで接種を受けた自動車技師トレイ・ボイスさん(23)は笑顔で話した。「客に接するから接種が重要だとは思っていたが、予約とか手続きが面倒だった。バスはうれしい驚きだ」
 トレドを含む州北西部では自治体や企業、宗教指導者らが連携してワクチンの情報提供や接種促進に努めている。「Vプロジェクト」と呼ばれるこの取り組みを始めたのは地元の実業家ショーン・サベージさん(50)だ。昨年11月、接種をためらう人が多いという調査を知り、「全国では無理でも地域でなら自分も何かできるかもしれない」と考え、地域の各分野のリーダーに声を掛けた。「驚くほど反応が良かった」と振り返る。
 CBSニュースなどが4月に実施した全米の世論調査によると、「ワクチン接種を受けるか」という質問に60%が「はい」「既に受けた」と答えたのに対し、18%は「たぶん」、22%は「いいえ」と回答し、接種に積極的ではない人は依然4割に上る。1日当たりの接種回数も4月をピークに減少しており、米各地で大規模接種センターの閉鎖が相次いでいる。
 こうした中、サベージさんは「現時点での最善策はワクチンを近くに持って行くこと。そして創造的で変わった解決策を考えること」と話す。地元消防の移動ワクチン車には1週間で計約250人が集まったほか、市内のバーの駐車場に接種施設を設け、接種者に無料でビールを提供したところ、100人が接種を受けたという。
 一方、接種を固く拒否する住民を翻意させるのは容易でない。戸別訪問を受けた芝生整備員ロバート・ウェルズさん(43)は説明に耳を傾けながらも「(ワクチンが)できるのが早過ぎる。何が入っているか分からない」と繰り返した。トレドのあるルーカス郡(人口約43万人)で接種を少なくとも1回終えたのは約43.6%(23日発表時点)。目標とする70%にはまだ遠く、Vプロジェクトは、接種の進んでいない地域を重点対象として戸別訪問や電話を続けている。 (C)時事通信社