中国・上海交通大学のHuijuan Zhang氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下の中国における医療従事者の心理状態について検討した研究26件計2万2,062例のシステマチックレビューと累積メタ解析を実施。その結果、不安、抑うつ症状、睡眠障害、ストレス関連症状などの心理的障害の有病率が高く、一般集団における精神疾患の有病率の数倍に上ることが示されたとGen Psychiat2021; 34: e100344)に発表した。

パンデミック初期に有病率のピーク

 Zhang氏らは今回、PubMedなどの医学データベースに登録された研究から、昨年(2020年)1月31日~2月27日の中国における医療従事者の心理状態について検討した26件を抽出し、医療従事者2万2,062例を解析に組み入れて心理的障害の有病率を算出。また、中国政府のウェブサイトを検索し、医療従事者への心理的支援に関連する政策を抽出し、検討した。

 解析の結果、研究期間中の医療従事者には各種の心理的障害が多く見られ、全有病率は不安症状が27.0%(95%CI 0.21~0.34%)、抑うつ症状が26.2%(同0.21~0.33%)、ストレス関連症状が42.1%(同0.26~0.60%)、睡眠障害が34.5%(同0.28~0.42%)に上った。

 さらに、累積メタ解析を行った結果、心理的障害の有病率はCOVID-19パンデミックの初期に最も高く、その後は低下傾向を示した。不安症状は2月前半→2月後半で37.7~56.3%→27.0~30.8%、抑うつ症状は同期間で37.2~50.6%→26.2~29.2%、ストレス関連症状は2月初旬→2月12日で66.2~72.6%→42.1~51.2%、睡眠障害は1月2日→1月18日以降で43.8%→34.1~34.9%の低下となった。ただし、これらの有病率は低下後も高いことに変わりはなかった。

包括的かつ適時な支援政策で有病率が低下傾向に

 COVID-19パンデミック下の医療従事者における心理的障害の有病率は、パンデミック初期段階で顕著であり、その後わずかな低下傾向を経て横ばいとなった。この変動について、Zhang氏らは「包括的かつ適時な対策が講じられた結果ではないか」との見解を示している。

 例えば、中国政府は早くも昨年1月27日に、COVID-19パンデミックにおける心理的障害への緊急介入に関する基本方針を発表し、医療従事者への心理的支援・介入が優先課題であることを強調した。

 同国では、昨年1月24日までに全国から344の医療支援チームが武漢市に派遣され、仮設病棟も短期間のうちに建設された。同氏らは「これらの施策により、現地の医療従事者の負担が軽減されたことは間違いない」と指摘している。2月15日以降は、現地の医療従事者に対する心理的支援として、医療支援チームに精神医療の専門家が加わった。さらに、心理的問題に関するオンラインおよび電話相談サービスが提供され、高齢家族の介護や子供の学校の問題など、医療従事者の家族に関する問題やニーズに応えるための政策が追加された。

 以上を踏まえ、同氏らは「COVID-19パンデミック下の中国の医療従事者には極めて多くの心理的障害が見られ、特にパンデミック初期に深刻だった。国家的な支援策の策定・実行が、医療従事者の心理的障害の軽減に有用な可能性があり、早い段階で介入する必要があることを示唆している」と結論。ただし、「今回の研究では、各政策と医療従事者の心理的状態との因果関係や統計学的関係を示せなかった」と指摘し、「各地域で政策の状況が異なるため、政策の影響については慎重に解釈する必要がある」と付言している。

(太田敦子)