耳に届く音の振動を内耳で神経の電気信号に変換できない遺伝性難聴で、世界で最も多いタイプの遺伝子変異による内耳細胞の異常が、患者の人工多能性幹細胞(iPS細胞)を利用して実験容器内で再現された。順天堂大の神谷和作准教授らが26日までに発表した。
 順大チームは2016年、この異常をマウスのiPS細胞を利用して再現したと発表し、治療薬の候補となる化合物も見つけている。神谷准教授は「難聴患者のモデル細胞ができたことで、治療薬や遺伝子治療法の開発が進む」と話している。
 鼓膜などで捉えた音の振動はリンパ液で満たされた内耳の蝸牛(かぎゅう)管に伝わり、内部の有毛細胞がリンパ液中のカリウムイオンを取り込むことで、振動を神経の電気信号に変換する。カリウムイオンは有毛細胞から周囲に多数ある「蝸牛支持細胞」を次々に通過し、拡散してからリンパ液に戻る。通常はこのプロセスを繰り返しているが、最も多いタイプの遺伝子変異ではカリウムイオンがリンパ液に戻れないため、有毛細胞が機能せず難聴となる。
 この遺伝子「GJB2」は、蝸牛支持細胞同士の間にカリウムイオンの通路を形成する役割があり、変異があると安定した通路ができない。順大チームが患者の日本人男児のiPS細胞から蝸牛支持細胞を作ったところ、カリウムイオンを通す機能が大幅に低下しており、病態が再現された。治療薬候補の化合物は、この通路を安定させる働きが期待される。 (C)時事通信社