急性冠症候群(ACS)など冠動脈疾患(CAD)の予防では、スタチンを中心とするLDLコレステロール(LDL-C)低下療法が重要となる。近年、国内外のガイドラインは積極的な脂質低下療法を推奨する傾向にあり、新たな脂質異常症治療薬も登場しているが、投与開始前にスタチンが効きにくい患者(スタチン反応性低下例)を予測する方法は確立されていない。国立循環器病研究センターの九山直人氏らは、血中PCSK9濃度とスタチン反応性低下の関係を検討。成熟型PCSK9濃度の上昇がスタチンの効果減弱に関与することが分かったと、J Am Heart Assoc2021年5月15日オンライン版)に報告した。

10ng/mL上昇するごとにスタチン反応性低下リスクが12%上昇

 主に肝臓で分泌される蛋白質のPCSK9は、肝臓表面に存在するLDL受容体を分解してLDL-C値を上昇させる成熟型と、酵素furinにより切断されLDL受容体分解作用を喪失したfurin切断型のサブタイプに分かれる。九山氏らは同センターでスタチン投与中のCAD患者101例をサブタイプで分類し、ベースラインおよびスタチン投与1カ月後の血中成熟型PCSK9濃度とスタチン反応性低下(ベースラインからのLDL-C減少率が15%未満と定義)の関係を検討した。

 LDL-C反応性低下例は101例中11例だった。多変量ロジスティック回帰分析の結果、ベースラインの血中成熟型PCSK9濃度はスタチン反応性低下リスクの有意な予測因子で、血中濃度が10ng/mL上昇するごとにリスクが12%上昇することが示された〔オッズ比(OR)1.12、95%CI 1.01〜1.24、P=0.03、〕。さらに受信者動作特性(ROC)解析を行ったところ、スタチン反応性低下を予測するカットオフ値として、血中成熟型PCSK9濃度228ng/mLが同定された〔曲線下面積(AUC)0.73、感度0.91、特異度0.56〕。

表. PCSK9のサブタイプ血中濃度とスタチン反応性低下の関係

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J Am Heart Assoc 2021年5月15日オンライン版)

 以上の結果について、同氏らは「血中成熟型PCSK9濃度の測定は、スタチン開始前の効果予測因子として有用である可能性が示唆された」と指摘。「この知見は、心疾患の初発・再発予防を目指した個別化医療の実現にもつながると期待される」とコメントしている。

(平山茂樹)