新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長ら著名経営者が今年夏の東京五輪・パラリンピック開催に懸念の声を上げた。緊急事態宣言が延長されることを受け、開催反対の世論が高まる恐れがあり、現時点で静観する多くの企業でも戸惑いが広がっている。
 五輪開催について孫氏は23日、ワクチン接種が遅れている日本で「(感染で)失われる命や、緊急事態宣言した場合の補助金、GDP(国内総生産)の下落、国民の我慢を考えるともっと大きな物を失うと思う」とツイッターで表明した。
 楽天グループの三木谷浩史会長兼社長も今月中旬放映の米CNN番組で「リスクが大き過ぎる」と主張。五輪スポンサー企業では朝日新聞社が26日付朝刊に「中止を決断するよう菅(義偉)首相に求める」との社説を掲載した。
 一方、政府系金融機関の支援が決まった居酒屋大手ワタミの渡辺美樹会長は28日の記者会見で、「やめるべきだとは思うが、(菅首相が)突き進むならば支持したい」と語った。有力スポンサー、NTTの澤田純社長は12日の決算会見で「私自身は、オリンピックは開くべきだと考えている」と強調し、安全な開催への議論を呼び掛けた。
 JTBは開幕まであと2カ月に迫り、観戦チケット付きツアーの販売再開に踏み切った。別の旅行業界関係者は「開催ありきではないが、準備を進めないと間に合わない」と頭を抱える。
 緊急宣言延長で行動への制約が続き、国民のストレスは募る一方だ。はけ口のようにインターネット上で選手らの言動に不満を示す動きも見られる。トヨタ自動車の長田准執行役員は12日の決算説明会で、安全な開催に期待しつつ「(選手への批判は)スポンサーとして大変心を痛めている」と語った。 (C)時事通信社