地銀100行の2021年3月期決算では、企業倒産に備える与信費用が増加し、10年ぶりの水準となった。新型コロナウイルス禍の長期化で過剰債務を抱える企業が増えており、地銀経営にも重い負担がのしかかる。返済を促すには企業の収益回復につながる支援が不可欠で、そのために再編など自らの体力増強も求められる。
 東京商工リサーチが4月に実施した債務の過剰感に関するアンケート調査では、8473社のうち2割にあたる1702社が「コロナ後に過剰となった」と回答。業種別では飲食や小売りなど、外出自粛や時短営業の影響を受けた業種を中心に負担感が増している。
 企業の債務が増えたのは、政府の資金繰り支援である実質無利子・無担保融資を背景に金融機関が貸し出しを活発化させたため。全国銀行協会によると、3月末の地銀の貸出金残高は283兆円と前年同期より5.0%増加した。スピード感を重視したこれら支援が奏功し、企業倒産も抑制されている。
 ただ、貸し倒れによる損失を国が実質的に肩代わりする仕組みであるため、返済能力を適切に評価しないまま貸し出しを膨らませている側面もある。今後、返済に窮する企業が続出する懸念が強まっており、岩手銀行の田口幸雄頭取は「これから返済が始まってくる中で状況がさらに悪化すれば(地銀経営にも)影響を及ぼす」と警戒感を示す。
 「政府の資金繰り支援は時間稼ぎに過ぎない」。地域金融に詳しい専門家は、事業構造転換も含めた抜本的な収益改善支援を急ぐべきだと強調する。だが、そのためには「地域を支えることができる力強い銀行が必要だ」(みちのく銀行の藤沢貴之頭取)と言える。
 こうした事情を背景に、ライバル行との統合や異業種との提携を決断する地銀も出てきた。5月には青森銀行とみちのく銀が24年の合併で合意したほか、福井銀行は福邦銀行の子会社化で最終合意。筑波銀行はインターネット金融大手SBIホールディングスと提携し、地域企業を支援するファンド創設を決めた。
 もっとも、コロナ禍は急速に地方経済を痛めており、息切れによる企業倒産が増加していく恐れがある。地銀は今後、積極的な資金繰り支援の副作用として生じた企業の過剰債務問題への対処という難しい経営課題を背負うことになる。 (C)時事通信社