【香港時事】香港で新型コロナウイルスのワクチン接種が伸び悩み、使っていない大量のワクチンの使用期限が迫っている。香港政府は危機感を募らせているが、当局への不信感などから接種率は約2割にとどまり、目標とする7割達成は遠い。
 香港政府は人口750万人をカバーする量のワクチンを確保し、2月に接種を開始。住民は、米製薬大手ファイザーとドイツのバイオ医薬品企業ビオンテックの共同開発製か、中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)製かを選べる。
 ワクチン提供体制に問題はなかったものの、政府は今月25日、これまでに届いた共同開発製のうち約84万回分、シノバック製約105万回分が未使用で、共同開発製は8月に使用期限を迎えると明らかにした。需要が少ないままであれば、購入ワクチンの「他地域への寄付」も検討するという。
 接種低迷の最大の要因は、接種後の死亡や流産といった事例が頻繁に報じられたことによる警戒感だ。民主派への統制を強める政府に対する反発も根強く、当局がワクチンと死亡の因果関係を否定しても市民の疑念は晴れない。市中感染が落ち着き、危機感が薄れていることも一因だ。
 医療機関で事務職を務める男性(22)は「政府の政策に協力したくない。ワクチンのデータが少ないと考える同僚もいる」と指摘。30代女性は「中国製は絶対に打ちたくない。副反応に関する政府の説明は不十分だし、打ったところで海外にも行けない」と話した。
 香港では欧米のような爆発的な感染拡大は起こらず、ウイルスの抑え込みにおおむね成功してきた。ただ、習近平政権からは香港は感染対策で後れを取っているとみられており、中国本土との往来は1年以上途絶えている。
 何としても接種計画を成功させたい香港政府は経済界にも協力を求めており、ある不動産開発企業は、接種者向けに1080万香港ドル(約1億5000万円)のマンションが当たる抽選実施を決定。一部の企業は、接種者に特別手当や有給休暇を与えるなどの便宜を図っている。 (C)時事通信社