新規抗うつ薬として国内外で注目を集めるケタミン誘導体esketamine。韓国・catholic University of KoreaのSheng-Min Wang氏らは、esketamineの鼻腔噴霧剤による有効性と安全性を検証するため、8件の二重盲検ランダム化比較試験(RCT)のメタ解析を実施。治療抵抗性うつ病および自殺企図を伴ううつ病に対する即時性が認められたとClin Psychopharmacol Neurosci2021; 19: 2.341-354)に結果を報告した。

うつ症状の変化や自殺企図改善を評価

 ケタミンの光学異性体で欧州では静脈麻酔薬として使用されているesketamineは、2019年3月に米食品医薬品局が治療抵抗性うつ病を適応症として鼻腔噴霧剤を承認したことが話題となった。難治性うつ病はうつ病患者全体の約3分の1を占め、うつ病患者の自殺企図率は10〜20%とされる。こうした背景から、Wang氏らはesketamine鼻腔噴霧剤による有効性と安全性を検討するシステマチックレビューおよびメタ解析を実施した。

 解析対象はEMBASE、PubMed、Psychinfo、Web of Scienceから抽出した804件およびClinicaltrials.gov.comやCochrane Central Registered of Controlled Trialsなどから抽出した168件の研究論文のうち、8件の二重盲検RCT(うち1件は未出版)。主要評価項目は、Montgomery Åsberg Depression Rating Scale(MADRS)スコアによるベースラインからのうつ症状の変化とした。自殺企図の改善についても評価した。

 8件はいずれも多施設共同研究で、うち6件は国際研共同究で2件は日本または米国のみで実施された。対象は計1,488例(プラセボ群661例、esketamine群827例)、投与量は8件中4件が可変用量、4件は固定用量で、ベースラインから評価までの期間は投与後2〜4時間、24時間、1週時、3〜4週時であった。

効果は投与後数時間から、約1カ月後も持続

 メタ解析の結果、プラセボ群と比べesketamine群のベースラインからのMADRSスコアの変化は、投与後2〜4時間では標準平均差(SMD)−0.41(95%CI −0.58〜−0.25、P<0.00001)と有意な改善が認められた。同様に24時間ではSMDは−0.36(95%CI −0.47〜−0.24、P<0.00001)、1週時では−0.25(同−0.36〜−0.13、P<0.00001)、3〜4週時では−0.25(同−0.35〜−0.14、P<0.00001)といずれも有意な持続効果が確認された。なお、全ての評価時点で有意な異質性は確認されなかった。

 自殺企図の改善については、プラセボ群に対するesketamine群の自殺企図のオッズ比(OR)は2.04(95%CI 1.37〜3.05、P=0.0005)と有意な改善が示された。しかし、24時間および3〜4週時では有意差は認められなかった(順にOR 1.15、95%CI 0.80〜1.65、P=0.46、同1.32、0.91〜1.90、P=0.44)。いずれも有意な異質性は確認されなかった。

 安全性および忍容性についても検討したところ、プラセボ群に対しesketamine群では有害事象が有意に高率であった(OR 4.23、95%CI 2.85〜6.27、P<0.00001)。具体的には解離行動(同7.93、5.36〜11.72、P<0.00001)、血圧上昇(同7.18、4.82〜10.69、P<0.00001)、悪心(同3.28、2.40〜4.48、P<0.00001)、目まい(同6.22、3.97〜9.73、P<0.00001)などであった。

 今回の結果から、Wang氏らは「esketamineの鼻腔噴霧剤は、プラセボと比べ治療抵抗性うつ病および自殺企図を伴ううつ病を含むうつ病患者に対する即時効果が示された」と結論。「また、同薬は自殺企図を伴ううつ病患者では自殺企図の予防効果も示唆された」と付言している。

松浦庸夫