心血管(CV)イベントの危険因子が認知症の発症リスクにもなると指摘されている。オーストラリア・University of New South WalesのJessica Gong氏らは、男女別にCVイベントの各危険因子と将来の認知症発症リスクの関連について検討。結果を、BMC Med2021.19. 110)に報告した。

50万人超を約12年追跡

 CVイベントの危険因子は血管性認知症だけでなく、アルツハイマー病(AD)の発症リスクにもなると報告されている。ADの発症には性差があると指摘されていることから、Gong氏らは同国のUK Biobank研究の登録データを用いて、男女別にCVイベントの各危険因子と将来の認知症発症リスクの関連について検討した。

 対象は、2006〜10年に40〜69歳でUK Biobankに登録された50万2,489人のうち、認知症未診断の50万2,226人。女性が54.4%で、平均年齢56.5歳(男性56.7歳、女性56.3歳)であった。ベースライン時の主な特徴は、男性に比べ女性は収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)が低く、糖尿病および脳卒中の患者が少なかった。

 11.8年(中央値)にわたり追跡したところ、4,068例(女性が45.9%)が認知症を発症した。男女別に見た1万人・年当たりの認知症発生率は男性8.42(95%CI 8.07〜8.78)、女性5.88(同5.62〜6.16)であった。

女性はSBP上昇が認知症発症リスクに

 Cox比例ハザード回帰モデルを用い、性、社会経済状況、CVイベントの各危険因子(高血圧、喫煙、糖尿病、肥満、脳卒中、脂質異常症など)と認知症発症リスクとの関連について男女別に検討した。その結果、性ではSBP値、ベースライン時の年齢、喫煙状況、脂質低下薬の使用、総コレステロール値、降圧薬の使用、BMI値、糖尿病などで補正したところ、認知症発症リスクは男性に比べ女性で低かった〔ハザード比(HR)0.83、95%CI 0.77〜0.89〕。

 それに対し血圧では、SBPの20mmHg上昇に伴う認知症発症リスクは男性(HR 0.98、95%CI 0.93〜1.03)に比べ女性で高く(同1.08、1.02〜1.13)、DBPの10mmHg上昇でも男性(同0.92、0.88〜0.97)に比べ女性(1.01、0.96〜1.07)でリスクが高かった。その他、喫煙者、糖尿病、高度肥満、脳卒中既往、社会経済状況の低さが男女ともに認知症発症リスクであることが示された。

 以上から、Gong氏らは「中年期におけるCV危険因子の一部は、男女ともに認知症発症リスクと関連することが示唆された」と結論。その上で「血圧に関しては、男性に比べ女性で認知症発症リスクに強く関連することが認められた。降圧治療に特化した研究により原因を明らかにすべき」との見解を示している。

松浦庸夫

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