厚生労働省は6月1日、関節機能改善薬ジクロフェナクエタルヒアルロン酸ナトリウム(DF-HA.商品名ジョイクル)を投与した患者10例で重篤なアナフィラキシーショック、アナフィラキシー反応などが現れ、うちアナフィラキシーショックを来した80歳の女性1例が死亡したとして、添付文書を改訂するともに安全性速報(ブルーレター)を発出。死亡例は投与直後ではなく、帰宅後に副作用を発現したことから「同薬の投与後少なくとも30分間は医師の管理下で患者の状態を十分観察すること」と注意を喚起した。同薬は変形性関節症の新薬として今年(2021年)3月に承認を取得、5月19日に発売された。推定投与患者数は約5,500例。

臨床試験におけるショック、アナフィラキシーの発現は0.4%

 DF-HAは非ステロイド抗炎症薬ジクロフェナク(DF)と変形性関節症治療薬の主成分であるヒアルロン酸ナトリウム(HA)とを共有結合させた化合物で、4週に1回関節内投与する注射薬。

 同薬は臨床試験においてショック、アナフィラキシーが0.4%に発現したとして、添付文書の重大な副作用の項で注意喚起を行っていた他、同薬の成分などに対して過敏症の既往歴のある患者は禁忌としていた。

 今回、同薬投与により重篤なショック、アナフィラキシーが10例(うち死亡した1例は因果関係不明)報告されたことを受け、添付文書に「警告」を新設し「緊急時に十分な対応のできる準備をした上で投与し、投与後も十分な観察を行うこと」と明記。さらに「重要な基本的注意」の項に「投与に際しては、緊急処置を取れる準備をすること。投与中及び投与後は患者の状態を十分に観察すること。また、ショック、アナフィラキシーが発現する可能性があること、及びその徴候や症状について患者または家族などに十分に説明し、異常が認められた場合には、速やかに医療機関を受診するよう、患者等を指導すること」を追記、注意を促した。

大半が投与後10分以内に発現

 厚労省によると、DF-HA投与後に死亡した80歳の女性は、最終投与から副作用発現までの時間は不明であり、タクシーで帰宅後に自宅近くでアナフィラキシーショックを起こしたとしている。

 重篤な副作用が報告された10例の詳細を見ると、年齢が把握できているのは6例(4例は不明)で、うち4例が80歳代、2例が70歳代であった。死亡した1例以外の転帰は、2例が回復・軽快に至ったが、残り7例は不明とされている。

 副作用の内訳は、アナフィラキシーショックが5例、アナフィラキシー反応が3例(うち1例は蕁麻疹を併発)、冷汗・蕁麻疹・腹部不快感・血圧低下が1例、全身の痒み(特に両腕の痒み、膨隆疹)が1例。最終投与から発現までの時間を把握できたのは5例で、投与直後が2例、数分後が1例、投与後5~10分後が1例と、帰宅後に発生した1例を除き、いずれも投与10分以内に生じていた。

投与後30分間は医師の管理下に、患者や家族に対する指導も

 これらの報告を踏まえ安全性速報では、DF-HA投与後は少なくとも30分間は医師の管理下で患者の状態を十分観察し、投与後のショック、アナフィラキシーの発現は投与直後に限らず、今回のように医療機関から帰宅後に発現している例も報告されている点に留意するよう注意を喚起。さらに、投与に際しては緊急時に十分な対応ができる準備を行うとともに、患者や家族に対してショックやアナフィラキシーが発現する可能性があることやその徴候や症状について十分説明し、異常が見られた際は速やかに医療機関を受診するよう指導することを求めた。

 なお、同薬の承認申請に当たり、複数の臨床試験で安全性の評価も行われたが、3件の国内第Ⅲ相試験のいずれも死亡例は報告されていない。

 一つは変形性膝関節症患者約440例を対象とした国内第Ⅲ相検証試験(613/1031)では、実薬群の2例に重篤な副作用として、アナフィラキシー反応、アナフィラキシーショック(いずれも重症度は中等度、いずれも投与当日に発現し、投与中止)が認められたが、それぞれ症状発現後8日目、同6日目に回復と判断されている。さらに、変形性関節症患者290例を対象とした国内第Ⅲ相検証試験(613/1033)、変形性関節症患者166例を対象とした国内第Ⅲ相長期投与試験のいずれにおいても、重篤な副作用、死亡例とも報告はなかった。

(小沼紀子)