新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチン接種が進んでいるが、接種後に一部で発生する血小板減少症を伴う血栓症(TSS)が危惧されている。こうした中、日本脳卒中学会と日本血栓止血学会は同ワクチンに関連した疾患に対する診断や治療をまとめた手引きを改訂、昨日(6月2日)に公式サイトで公開した。TTSでは有効性や安全性のエビデンスが確立された治療法はまだ存在しないが、日常診療で遭遇した場合の対応方法を提言する目的で作成したという。

接種後4~28日に発症

 2021年3月以降、アストラゼネカのアデノウイルスベクターを用いたSARS-CoV-2ワクチン接種後に、異常な血栓性イベントおよび血小板減少症を来す症例が欧米で報告された。その後、ヤンセン/ジョンソン・エンド・ジョンソンのアデノウイルスベクターを用いたSARS-CoV-2ワクチンでも同様のTTSが報告された。

 TTSの発生頻度は1万~10万人に1人以下と極めて低いが、出血や著明な脳浮腫を伴う重症脳静脈血栓症例が多く致死率も高いことから、両学会は同ワクチンに関連した疾患に対する診断や治療をまとめた「アストラゼネカ社COVID-19ワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓症の診断と治療の手引き」を改訂、第2版を公開した。

 第2版ではTTSの特徴として①ワクチン接種後4~28日に発症②血栓症(脳静脈血栓症、内臓静脈血栓症など通常とは異なる部位に発生③中等度〜重度の血小板減少④凝固線溶系マーカーの異常(D‐ダイマー著増など)⑤抗血小板第4因子(PF4)抗体陽性〔酵素免疫測定(ELISA)法による〕―を挙げている。

 TTSの診断では、ワクチン接種後4~28日に、新規発症した血栓症に関連した脳卒中、脳静脈血栓症、内臓静脈血栓症などの症状が認められた場合は、ヘパリンの使用歴を問わずTTSを疑うこととしている。

 さらに血液検査、画像診断で①血小板数低下②血栓の存在③凝固線溶系マーカーの異常(D‐ダイマー著増など)④他に明らかな原因がない―場合はTTSの可能性があるため、ELISA法による抗PF4抗体検査を行うこととしている。

新たな知見が加わる度に改訂

 TTSの病態は、ヘパリン投与に依存しない自己免疫性ヘパリン起因性血小板減少症(aHIT)と類似しているため、TTS が疑われた場合は、抗PF4抗体検査の結果を待たずにaHITに準じて免疫グロブリン静注療法や抗凝固療法などを開始することを推奨している。

 最後に、「TTSは新しい疾患概念であり、有効性や安全性のエビデンスが確立した治療法はまだ存在しない。本手引きは、SARS-CoV-2ワクチンに関連した疾患に対する診断や治療をまとめ、日常診療で遭遇した場合の対応方法を提言するために作成したものであり、ワクチン接種に伴う副反応を強調したものではない。ワクチン接種によってTTSが発生した場合は、本手引きを参考に適切な医療の提供してほしい」と結んでいる。

 TTSには、確定診断のための抗体検査(ELISA法)の導入、治療候補薬の保険収載、ワクチンとの因果関係の解明など、多くの課題が残されている。両学会は、新たな知見が加わるたびに手引きを改訂する予定だという。

(大江 円)