まん延防止等重点措置の実施により、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の飛沫感染防止対策として、飲食店などにアクリル板やビニールシートの設置が求められているが、これらはどの程度有効なのか。電気通信大学i-パワードエネルギー・システム研究センター教授の横川慎二氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のクラスター発生地点における換気状態を評価し、マイクロ飛沫の動きを分析。その結果、アクリル板やビニールシートによる空間の遮蔽が空気を滞留させ、換気状態が悪化、結果としてマイクロ飛沫感染のリスクを高める可能性があることを明らかにした。詳細は、査読前論文公開サイトmedRxiv2021年5月27日オンライン版)に掲載されている。

クラスター発生現場を調査

 SARS-CoV-2感染拡大の予防には、「接触」「飛沫」「マイクロ飛沫」という3つの感染経路に対して策を講じる必要がある。マイクロ飛沫は、たとえ空気中に存在していたとしても、室内の二酸化炭素(CO2)濃度を計測・可視化して換気状態を良好に保つことで、早期の排出が可能だ。

 横川氏らはこれまでに、地域と連携してCO2濃度の可視化や換気状態を改善するための実証実験を行ってきた。そうした中、今年(2021年)3月に宮城県内でマイクロ飛沫による感染が原因とみられる11人のクラスターが発生。現地調査、マイクロ飛沫の動きの分析などを実施した。

 まず、クラスターが発生した事務所を調査。飛沫感染対策の一環として、向かい合う机を隔てるように、床面から高さ1.6mのビニールシート製パーテーションが設置され、空間が5区画に分かれていた。クラスター発生当時、事務所の出入口の扉は開いていたが、廊下と事務所内の窓は閉まっていた。

シミュレーションでも気流の遮断を確認

 次に、CO2濃度の可視化により換気状態を評価した。その結果、クラスター発生当時と同じ状況下では、区画によっては換気回数が0.1回/時とかなり低いことが示された。

 5区画中2区画で小規模クラスターが発生した点について、横川氏らは「パーテーションによって気流が遮られ、換気能力が低下。区画内でマイクロ飛沫による感染が発生した可能性が示唆される」と考察している。

 さらに、熱流体シミュレーションによってマイクロ飛沫の動きを解析。区画間の空気の流れがパーテーションによって遮断されていることが示された()。

図.熱流体シミュレーションによる解析結果
(感染者の呼気がパーテーション区画内に広まる様子)

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(電気通信大学リリースより)

 改善策として横川氏らは、事務所の窓を区画ごとに開け、出入口の扉と廊下の窓を開放することを提案。「それにより、満遍なく空気の流れ道をつくることができ、換気回数が5.1~8.4回/時に改善する。さらに換気ファンを回せば、換気回数は10~28回/時に向上するだろう」と試算した。

 同氏らは「SARS-CoV-2の飛沫感染対策としてパーテーションを設置する際には、区画ごとに十分な換気を確保することが重要だ」と強調している。

(比企野綾子)