近年の世界における熱中症による死亡者の3人に1人は地球温暖化が原因であることが、英・London School of Hygiene & Tropical Medicineとスイス・University of Bern が主導する環境ストレス要因、気候、健康に関する国際研究プログラムMulti-Country Multi-City (MCC)Collaborative Research Networkの研究で明らかになった。同大学のAna M. Vicedo-Cabrera氏らがNat Clim Chang2021年5月31日オンライン版)に報告した。これは、人為的な気候変動が気温上昇に関連する死亡リスクを高めることを示した初の研究だという。

中南米、東南アジアで高い死亡率

 地球温暖化は、山火事や異常気象に関連する直接的な影響から、マラリヤやデング熱といったベクター媒介性疾患の蔓延など、さまざまな形で人々の健康に影響を及ぼす。そのうち最も顕著なのは、気温上昇に関連した疾患による死亡率と罹患率の増加である。将来の気候に関しては、平均気温の大幅な上昇が予測されており、熱波などの極端な現象は将来の健康負担の増加につながる。しかし、ここ数十年の気候変動によって発生した高温が人の健康に及ぼす影響を定量化する大規模かつ体系的な取り組みは行われていない。

 そこで研究チームは43カ国732カ所のデータを用いて、1991~2018年に人間の活動に伴い人為的に上昇した気温に関連する死亡の割合を推定した。高温に関連した死亡の割合は、高温に起因する死亡者数と定義され、人の健康に最適な温度よりも高温に曝露することで発生し、地域によって異なる。人為的な熱排出がある場合とない場合について気候をシミュレートすることで、気温上昇の健康への影響を人の活動に関連したものと自然によるものに分けて検討した。

 検討の結果、全対象国において1年間の熱中症による全死亡者に占める人為的気候変動に起因する熱中症による死亡の割合は37%(範囲20.5~76.3%)と推計された。死亡率の増加は全ての大陸で認められたが、増加幅は地域によって異なり、各地域の局所的な気候の変化と住民の脆弱性に応じて多くの場所で年間数十~数百人の死亡者が発生した。興味深いことに、過去の人為的に発生した高温のごく一部しか排出していなかった低・中所得国の住人が、最も大きな影響を受けていた。

 1年間の熱中症による全死亡者に占める人為的な気候変動に起因する熱中症による死亡の割合は、中南米(例えばエクアドルやコロンビアで最大76%)と東南アジア(48~61%)で最も高かった。

東京の人為的な気候変動による死亡者数は年間156人

 各都市で発生した人為的な気候変動による年間死亡者数は、チリ・サンティアゴで136人(市内の熱関連死の44.3%)、アテネで189人(同26.1%)、ローマで172人(同32.0%)、東京で156人(同35.6%)、マドリードで177人(同31.9%)、バンコクで146人(同53.4%)、ロンドンで82人(同33.6%)、ニューヨークで141人(同44.2%)、ホーチミンで137人(同48.5%)と推計された。

 Vicedo-Cabrera氏らは「これまでに確認された地球の平均気温の上昇はわずか1℃程度だが、これは人為的な熱の排出量が抑制されずに増え続けた場合に起こりうる気温上昇の一部にすぎない」と指摘。「今回の結果から、将来の温暖化を軽減するための強力な緩和政策を導入し、熱曝露による悪影響から人々を保護する介入を実施する必要があることが裏付けられた」と結論している。

(大江 円)