アラブ首長国連邦(UAE)・Sheikh Khalifa Medical CityのNawal Al Kaabi氏らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する中国医薬集団(シノファーム)が開発した2種類の不活化ワクチン(WIV04、HB02)の有効性について、UAEとバーレーンで進行中の第Ⅲ相二重盲検ランダム化比較試験(RCT)の中間解析結果をJAMA(2021年5月26日オンライン版)に発表した。SARS-CoV-2の症候性感染に対し、WIV04ワクチンは72.8%、HB02ワクチンは78.1%の有効性を示し、重篤な有害事象はまれであった。

健康人で症候性感染が大幅に減少、重症例なし

 不活化ワクチンは一般的には安全性が高く、2~8℃の環境で長期間にわたり容易に保管できるという利点を有する。今回のRCTで用いられた不活化ワクチンは、中国・武漢市の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者2例から分離した2種類のSARS-CoV-2株(WIV04株、HB02株)を用いて開発された。

 AI Kaabi氏らは昨年(2020年)7月、COVID-19の既往歴がない18歳以上の参加者の登録を開始。登録前14日以内に呼吸器症状や重大な呼吸器疾患を有する者などを除外した4万411人を、WIV04群、HB02群、アジュバントとしての水酸化アルミニウムのみの対照群に1:1:1でランダムに割り付け、3週間間隔で2回接種した。

 主要評価項目は、ワクチン接種後14日以降にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査でSARS-CoV-2陽性を示し、2日以上続く37.5℃以上の発熱、悪寒、咽頭痛、鼻閉、筋痛、疲労感、頭痛のうち2つ以上を有する症候性感染の発生率とした。副次評価項目は、重症化率および死亡率とした。

 4万382人(WIV04群1万3,459人、HB02群1万3,465人、対照群1万3,458人)が少なくとも1回の接種を完了。平均年齢は36.1歳、男性84.4%だった。2回の接種完了後14日以降の追跡が可能だったのは、3万8,206人(94.6%)。

 中央値で77日(範囲1~121日)の追跡期間中に142例の症候性感染が発生した。内訳は、WIV04群26例、HB02群21例、対照群95例で、1,000人・年当たりの発生率はそれぞれ12.1(95%CI 8.3~17.8)、9.8(同6.4~15.0)、44.7(同36.6~54.6)だった。

 SARS-CoV-2に対するワクチンの有効性は、WIV04群が72.8%(95%CI 58.1~82.4%)、HB02群が78.1%(同64.8~86.3%)で、いずれも対照群との有意差が認められた(各P<0.001)。

 重症例は対照群で2例発生したが、両ワクチン群では見られなかった。死亡例は発生しなかった。

深刻な有害事象の発現率は3群で同様

 SARS-CoV-2に対する中和抗体の幾何平均抗体価を調べたところ、接種前は両ワクチン群で2.3、対照群で2.4と同等だったが、2回目接種後14日目には、WIV04群で94.5(95%CI 89.7~99.5)、HB02群で156.0(同149.6~162.7)、対照群で2.7(同2.6~2.8)、中和抗体の陽転率はそれぞれ99.3%、100.0%、2.3%だった。

 接種後7日以内の有害事象の発現率は各群で41.7~46.5%に上ったものの、多くは一過性のもので自然軽快した。重篤な有害事象はまれであり、発現率は3群で同等だった(WIV04群0.5%、HB02群0.4%、対照群0.6%)。

国内でも第Ⅲ相試験に向けた準備が進行中

 AI Kaabi氏は「2種の不活化ワクチン接種により、SARS-CoV-2の感染リスクが大幅に低下し、重篤な有害事象はまれだった」と結論。ただし、研究の限界として、妊婦や18歳未満の女性が参加しておらず、それらの集団における有効性や安全性は不明である点、慢性疾患患者や高齢者における有効性の検証が不十分である点を挙げている。

 なお、日本では今年3月にKMバイオロジクスが不活化ワクチンの第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を開始。20~65歳の健康人および65歳以上の高齢者を対象に接種を行い、年内の第Ⅲ相試験実施を目指している。

(木下愛美)