抗不安薬・睡眠薬として用いられるベンゾジアゼピン(BZ)系薬は依存性が高く、乱用が世界的に問題となっている。米・Columbia UniversityのJason D.Wright氏らは、一般的な手術を受けた約250万例のデータを基に周術期のBZ系薬使用頻度と継続使用について検討。周術期のBZ系薬処方率は全体の2.6%で比較的低かったものの、初めて処方された患者の5人に1人が継続使用していたとして、乱用のきっかけとなりうることに警鐘を鳴らした。詳細はJAMA Netw Open2021; 4: e2112478)に掲載された。

一般的手術での周術期使用を検討

 米国におけるBZ系薬の年間処方件数は2013年に1,350万件、過量服用による死亡は2010年に成人10万人当たり3.07人で、1996年(810万件、0.58人)と比べそれぞれ約1.7倍、4倍以上に増加している。BZ系薬の乱用は、他の薬物の過剰摂取による死亡や事故、転倒などの外傷リスクにも関連しており大きな問題となっている。

 オピオイドの継続使用例の多くは、手術時の処方がきっかけであることが分かっているため、Wright氏らはBZ系薬でも同様の関連が認められるか否かを検討した。

 米国の大規模医療データベースから、2009年~17年に一般的な手術を受けた成人患者250万9,599例のデータを抽出し、手術前にBZ系薬使用歴がない患者における周術期使用率と継続処方率を評価。周術期使用は術前30日前~術後14日の使用、継続使用は術後90~180日以降の再処方と定義した。

継続処方率は19.5%、うち40%超が2回以上

 250万9,599例の平均年齢は54.4±15.3歳、女性は63.6%で、周術期に初めてBZ系薬を使用した患者は6万3,931例(2.6%、95%CI 2.53~2.57%)で、最も多く処方されていたのはジアゼパム(32.3%)、次いでアルプラゾラム(29.4%)だった。BZ系薬処方日数の中央値は10日〔四分位範囲(IQR)5~23日〕であった。

 BZ系薬の継続処方を受けた患者は1万2,468例(19.5%、95%CI 19.2~19.8%)で、継続処方の回数は1回が7,013例(56.2%)、2回以上が5,455例(43.8%)だった。

 継続使用との間に関連が認められた因子は、以下の通り。

  • メディケイド受給者〔vs. 民間保険加入者:調整後リスク比(aRR)1.29、95%CI 1.03~1.62〕
  • 70歳以上(vs. 40~49歳:同1.14、1.05~1.23)
  • 女性(vs. 男性:同1.10、1.06~1.15)
  • 合併症スコア(Elixhauser尺度3以上 vs. 0:同1.11、1.04~1.19)
  • 不安症、うつ症状、不眠症、物質使用障害(ex. 不安症の場合、同1.43、1.37~1.50)

 BZ系薬の乱用率が高い背景には、入手の手軽さや依存性の高さがあると考えられる。米国ではBZ系薬とオピオイドの併用例も急増している。

 Wright氏らは「周術期のBZ系薬処方率は比較的低かったが、周術期処方を受けた患者の5人に1人が継続使用していた」と結論している。同氏らによると、臨床的背景に加え処方パターンも継続使用と関連していたが、これらは継続使用を減らすために修正可能な因子である。

 今回の研究ではBZ系薬の継続処方率のみを見ているため、実際には本人が使用せず違法に転売している可能性も否定できない。

  • 股関節形成術、膝関節形成術、手根管手術、虫垂切開術、胆囊摘出術、甲状腺摘出術、結腸切除術、痔核切除術、子宮摘出術、前立腺切除術、肺葉切除術、白内障手術

(小路浩史)